脱線千一夜の初めに

 

 長い間、教員生活を続けて来たが、その間、いわゆる脱線といわれる「授業と関係のないおしゃべり」を纏めて見た。

自分で付けた名ではないが「お話玉手箱」なんて言われた事もある。

「先生、また、お話玉手箱やってよ」なんて、生徒からせがまれたりしたが、彼等からすればキリキリと数学でしめられるよりも、呑気な話を聞いてアハハハ笑ってた方が楽しいに決まっているので、決して私の話が巧いからではない。

生徒の中には、なかなか要領のいいのもいて、何のかんのと変な質問をして私の話を誘導しようとする者もいる。

でも、キリキリと数学ばかりやっているよりも、ピンと伸びたゴムをたまに弛ませるように、ホッとする時もあっていいのではなかろうか。

そのような意味合いでの話なので、大勢の卒業生諸君の中には、あの時に聞いた話じゃあないかと合点する人もいるだろう。

 

 稚拙ではあるけれども、生徒諸君の今後の人生にプラスになればなんて事も考えながら話したが、猫に小判、豚に真珠、ましてや小判でも真珠でもない話で、相手によっては「なんだ、この先公、おちゃらけてやら」と、組みし易しと見られる恐れがある。

落語家が「まくら」でお客の反応を観察し、鋭く計算して本題に入って行くように、難しい年頃の中学生に対しては、これが良いという方法が無く、いつも反応を観察して、TPOにあった指導が必要である。

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