インチキ修理
ジャンボジェット機の、圧力隔壁というのが壊れて、尾翼がすっとんでしまったのが、フラフラと相模湾から関東山脈をさまよって、山の中に激突したことがあった。
ほんの何人か、運のいい人は助かったけれど、ほかの人は助からなかった。
パイロットも副操縦士もだ。
所で、この飛行機は、以前に、ある空港で尻餅事故を起こした奴で、それを直して使っていたんだ。
それで、それでだよ、これを調べて見たら、何でこんな変な直し方をしたのか理由が分からないと、断面図が新聞に出ていた。
バカ言うなってさ。
先生みたいな、シロウトだって、一目ですぐに分かった。
先生だって分かる位だから、新聞記者だってすぐに分かったろうし、ましてや、その道の専門家なら詳しく分析するだろう。
つまり、外から見るといかにも元通りにしてありますって感じだが、中はデタラメ、つまり、上と下だけ芯があって、中は芯がない鉛筆みたいなもんだ。(笑声)
鉛筆と違って削るわけじゃあなし、この位で、多分平気だろう、恐らく壊れないだろう位にしてあり、二枚の所を一枚にしとけば、金属疲労が二倍かかって、限度を越してバカンと壊れる。
その時に乗ってたお客が災難だ。
日本は安保条約で半分アメリカに占領されてるようなもんだし、アメリカの会社には強く出られない。
泣き寝入りだな。
まあ、修理したのは恐らくボーイングの下請けの会社で、こんな、手抜き修理やりゃあがったって訳で、すぐに、その下請け会社、お払い箱になったろうがね。
とにかく、それをやったのが下請け会社だろうと何だろうと、ボーイング社の責任は大きい。
でも、アメリカはこんな手抜き修理をやった、なんたるケシカラン奴だと、誰も言わない。
日米戦に負けて、アメリカに首根ッコを押さえられている日本の悲哀だ。
いや、日本の政治家や経済人達がアメリカって言う、いいお得意を逃がさないように、そのご機嫌を取り結んでるのさ。みんな、知ってても言わないのさ。
まあ、とにかく、商売には信用が必要だ。
いくらか安く仕事していたかも知れないけれど、こんなインチキやった会社に下請けさせてたってなりゃあ、信用ガタ落ちだろう。
まあ信用って言えばよくあるんだなあ、おかしな事が。
いささか変な事やらかしたらしいので、お前だろうなんて突っ込んで聞くと、プイとむくれやがって「先生は生徒の事、信用しないんですか」なんて、でかい事言いやがる奴がいる。
信用できる生徒ばっかしなら苦労はねえよなあ。(笑声)
そんなのが、後でバレて引っ込みがつかなくなってしまい「今度から信用される生徒になります」なーんて言いに来たってもう駄目だ。
いくらかしおらしい顔してりゃあまだましだけど、そんな奴に限って、悪いのは俺ばかりじゃねえ、AだってBだってCだってみんなやってんだ。今も、窓側から二列目で後ろから三番目の奴だって、先生に見つかんねえと思って、時間中、マンガの本を読んでんだ。(笑声)
何で俺ばかりが小言食わなけりゃあなんねえんだなんて態度がミエミエだな。
こんな奴信用して何かやらせると、とんでもない事になるかも知れないぞ。
「この株は絶対に上がります。必ずです」なんて言われて株買ったら、たちまち下落してタダ同然、文句言ったら「こんなに安くなったんだからとてもお特です。もっともっと買って下さい」だそうだ。(笑声)
<脱線千一夜 第1話>
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