手付け金サギ

 

 新聞見るとサギ事件とかいって、他人をだましてお金を持ち逃げする事などが出ている。

でもこれは、よく考えるとサギじゃなくって泥棒だね。

他人のものを勝手に持ち逃げするのはサギじゃなくって泥棒だ。

サギってのはこんなものじゃない。

法律的にみて決して悪い事をしていない。でも結局は他人のお金をだまして取っちゃうのがサギだ。

でもだまされた方は、どうしようもない。警察や裁判所でも相手にしてくれない。

「それはあんたがボケてたからだ」と言われるだけだ。

君達にも参考になると思うから、そのサギの一番の初歩、ABCのAの話をして上げよう。

 

 これは手付け金サギといわれる。

手付け金と言うのはね。AがBに5000万円で土地を売るのが決まった。そうするとBがAに手付け金を払う。

手付け金はふつう十分の一だから5000万円の十分の一の500万円をBがAに払う。残りの4500万円は実際に土地と引き替えと言うわけだ。

これで契約が成立、もし、Bが買うのをやめたというのなら、Bはこの500万円をAにそのまま上げてしまわなければならないし、AがBに売るのを止めると言うときは、この500万円に、更に同額の500万円を付けて1000万円にして返さなければならない。これがつまり手付け金倍返しという事だ。

手付け金の意味は分かったね。これで確かに契約は成立したのだがここにまた別の人が絡んでくると話がめんどうになる。

 

 今ここにCという人がAの所にやってきて、そして「Aさん、あの土地を私に売りませんか」ときた。

だからAが「ああ、ちょっと遅かったですねえ。あれはBさんに5000万円で売る約束をしてしまったんですよ」と答えると、なんとCはとても残念がって「ああ、おしかったなあ、私だったら6000万円で買ったのに」と言う。

Aはこれを聞いて、まてよ、Bに手付け金を倍返しして500万円損しても、Cに1000万円高く売った方が差し引き500万円得だと思い「じゃあBさんを破約にしてCさんに売りましょう」ということになった。

するとCは「それはありがたいですね。では6000万円で買いますが、今、手元にお金がないのですみませんが手付け金は100万円で勘弁してください。後で5900万円必ずお払いします。」と言ったのでAはCから100万円受け取りBに訳を話して手付け金の500万円に更に500万円を足して1000万円にして返したというわけだ。

おや、もう分かっちゃった人がいるね。

そう、その通りだ。BとCでグルになってAをダマしているんだね。

これから後、CはさっぱりAの所に来ない。AがCの所に行っても留守ばかり。

ようやくつかまえたら「あの土地はどうも具合が悪くて買うのをやめました。ですから100万円はAさんに上げます。それだけ上げれば文句ないでしょう」ときたわけだ。

さあBとCはいくら儲けたのだろうね。

そうだ、500万円引く100万円だから400万円だ。

ふたりで山分けすれば一人で200万円。

それで法律には全然引っかからないんだよ。世の中こんなもんさ。

 

 こんなふうに、頭使って人の金、取り上げようと狙ってる奴、大勢いるんだ。

この手付け金サギなんてのは一番初歩、ABCのAなんだ。

先生だって知ってる位だもんな。

何、先生やったことあるかって、バカな、何億円も舌先三寸で儲けてたら、学校なんか来ないでハワイでも行って寝てるよ。(笑声)

 

<脱線千一夜 第15話>  


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