ピストル

 

 鬼怒川にウエスタン牧場と言う遊園地がある。

昔、尾瀬に行った帰りに行ったりしたけれど、今は、教育上良くないってわけで、(笑声)  行かなくなちゃった。

でも、家族旅行で行った人多いだろう。何人位いるかな。そうか、どこの組にも何人かいるね。

ここの昼食はジンギスカン料理で、おいしくて、とても評判がいい。特に男の子なんか大喜びだ。

それから、ショーがおもしろい。まあ、教育的じゃないって言う人もあるけどな。

ピストルを使っていろんな芸をやるんだが、それが実にうまい。百発百中、絶対に外さない。

振り返りながら風船を射ったり、鏡で的を見ながら後ろ向きに射ったり、ロビンフッドの話のように、お客の頭の上にリンゴをのせて、それを射ったりするんだ。

もし、手元が狂ったらそのお客、死んじゃうよ。

すごく、おっかないんだけれど、見た者いるか。この組にも何人かいるね。

 

 さて、日本は豊臣秀吉の刀狩り以来、民間人は武器を持てない事になってる。

それなのに、あのショーでは、なぜ、ピストルを使えるんだろうね。

何? 特別な免許だって、さあそんな免許は聞いた事ないよ。

ピストルを自由に使えるアメリカなんかなんかならとにかく、日本では、大勢のお客を前にしてピストルの撃ち合いが出来るんかね。

ちょっと、お前立ってごらん。そうしたらこんなふうに、頭の上にリンゴ乗せるんだ。この黒板消しがリンゴだ。(笑声)

いいか。こっちから、ピストルで射つからな。動くなよ、動くと頭に穴があくぞ。(笑声)  てな具合だけど、一体どうなってるんだろう。

そうか。電気、うん、そうだろうな。まあ、そんな仕掛けだろうな。

初めっからリンゴの中に火薬を入れといて、ピストルを射つと同時に、助手がスイッチを押す。

さもなけりゃあ、ピストルの音をマイクで拾って電気を流して、火薬を爆発させるんだろう。

つまり、そっぽ向けて射っても、ちゃんと風船やリンゴは、爆発するんだ。一種の手品だなあ。

だから「お前はなかなかの腕前だ、ぜひ、うちの組にはいれ」なんて暴力団にスカウトされる事はない。(笑声)

まあとにかく、お客さん達、感心して見てる。

俺もあんなふうに上手にピストル使えたらいいな、なんて顔して。(笑声)

 

 所で、日本は、長物っていわれるライフル銃や散弾銃は、許可制で、狩猟用として、持っていてもいいんだ。狩猟用だよ。

ピストルは服の中に隠しておけるが、長物は、持ってりゃすぐ分かる。

ピストルは、突然、取り出して犯罪に使えるから禁止だ。

所が、広い世界にゃあこの反対で、ピストルはOKだが長物は禁止って言う国もある。

何故かね、そうだ、その通り、革命騒ぎだ。

何千人の者がライフル銃や散弾銃で武装して、政府に反対して、軍隊と戦ったら、大変なことになるって言うわけで、長物は禁止、それに反してピストルなんか、おもちゃみたいなもんで、ちょっと離れりゃあ当たりゃしない。

そんな物で軍隊と戦えっこありゃしないから、ピストルなんか、無視されてる。

だから、国によって、小はOKで大は駄目、小は駄目で大はOKといろいろある。

所が、アメリカのように、大小両方ともOKっていった、おおらかな国もある。

だからアメリカでは、銃を使った犯罪が物すごく多いが、昔からの伝統で、銃から身を守るには銃しかないってんで、今更、刀狩りは出来ないって訳だ。

君達も知ってるような悲惨な事件が後をたたない。

お母さんと子供と早や射ちごっこをした時、子供の持ってたピストルに、タマタマ、弾(タマ)が、(笑声) でも、笑いごっちゃあないよ。弾が一つ入っていて、お母さんは大怪我をしちゃったとか言う話もあった。

まあ、日本じゃあそんな事ないやなあ。ピストルの本物なんか、手に入らない。

そうかといって熊撃ち用のライフル銃じゃあ早や射ちごっこは無理だよな。(笑声)

 

<脱線千一夜 第17話>  


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