ゴルフのボール
ゴルフのボールはどんな形か知ってるな。
卓球の球ぐらいで小さい穴、いや、穴って言うよりも窪みだな。小さい窪みが沢山ある。
さて、この小さい沢山の窪みは何故あるのだろうね。
卓球の球はツルツルだよ。ほかのスポーツのボールでも穴なんかあいて無いよな。
空気抵抗の事から考えると、こりゃ当然ながらツルツルがいいに決まってる。同じ空を飛んでく物でも、飛行機は胴体にしろ羽にしろツルツルだよな。
所がゴルフのボールは違って穴だらけ。何故だろうなあ。
え? あんまり飛びすぎると無くっしゃうから。(笑声)
所が違うんだなあ。もしゴルフの球が卓球の球みたいにのっぺりしていたら、全く同じように打つと、わずか三分の一しか飛ばないんだそうだ。ちょっと驚きだね。
あのように窪みをたくさんつけてあるから、三倍も飛ぶんだそうだ。
メーカーが色々と実験をして、一番遠く迄飛ぶように作ったらしい。
何故そうなるのか分からないので理科の先生に聞いたら、どうもスピンと空気の渦に関係があるらしい。
スピンと言うのは回転で、地球の自転みたいなものだ。
ゴルフのボールを強く打つと、打たれた場所によって自転しながら飛んで行く。
うまく打つと野球のカーブのよう曲る力が上へ上へと働いて距離が伸びる。
下手やって反対廻りにしゃったら目の前に墜落、いい塩梅にウサギでもいてくれればいいんだが、一生やってても待ちぼうけって訳だろう。(笑声)
とにかくこの場合は空気抵抗があった方がいい。
空気の渦の場合もそうで、空気抵抗が少ないと大きい渦が出来てブレーキがかかり、空気抵抗が大きい方がむしろ渦が出来ないのだそうだ。
とか色々難しい理屈を聞かされた後で、でも、このような流体力学の問題は自分の専門じゃあないから、間違ってても知らないヨって言われた。(笑声)
とにかく流体力学の問題ってのは、どうも、常識では分からないような事が多い。
例えば船の舳先(へさき)の大きい球だ。ボートみたいな小さい舟はいわゆる舟型で、流線型になってるけれど、大きい船は喫水線の下に大きいゲンコツみたいな物が出っ張っている。
そうだ。知ってる者大勢いるな。
あんなものがあったんじゃあ水の抵抗が増えて困ると思ったら大違い。同じようにエンジンを回してもスピードがぐっと速くなるそうだ。
コンピューターで難しい計算をしたり、水槽実験なんて、まあプールで模型を動かしたりして設計をするんだろうが、船が作る波と、ゲンコツが作る波とを打ち消し合せて全体の波つまり造波抵抗と言うのを減らす、という訳でスピードが出る。
ゲンコツ部分の水の抵抗なんか、物の数じゃ無いって訳だ。
実際に今の船は、昔の船に比べて波を立てない。その分だけエネルギーのロスを防いでいる。
スピード・スケートの選手が面白い物を付けてるのを知ってるかな。変なギザギザみたいな物。
そうだ。帽子や足なんかに付けてる奴だ。
あんなもの付けてりゃ、空気抵抗が増えて遅くなっちゃうと思ったら大違い。あれがあった方がスピードが出るそうだ。
でも、何故だか分からない。理科の先生でも分からない。多分、オマジナイの一種だろうって言われたよ。(笑声)
<脱線千一夜 第18話>
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