チンパンジーのいじめ

 

 前に、本で読んだ事があるんだけど、

「動物は、その種族同志で戦ったり、なわばり争いをしたりはするが、決して、相手を殺さない。これは昔からの種族維持の為の本能であって、イジメやケンカがあっても、相手を殺すようなひどい事はしない。そんな事をすれば、仲間が減って、種族の力が弱まる。同じ種族で殺し合いをするのは、人間だけだ。それも、最大の強力な武器を使ってだ」

なんて話を聞いて、へーそんなもんかナと思ったけど、いや、どうしてどうして、動物達の殺し合いもすごいもんだ。

オタマジャクシの友食いってのがあるが、これは、餌が少ないのでこのままだと、全滅しちゃう。だから、小を殺して大を残す。ってな訳で、種族を残す知恵として、説明がつく。

だけど、この前、チンパンジーのイジメをテレビで見たが、ひどいもんだ。

まだ若い雄ザルが、どうしょうもなく生意気で、ボス猿や目上の猿にあいさつする所か、順番を無視して勝手に食い物をとる。メス猿にはチョッカイを出す。(笑声)

あんまり、態度がでかいんで、初めのうちは、まだガキなんだからって訳で、大目に見ていたボス猿も、ほかの猿も、とうとう、怒りだして、まず、ボスが怒った所、他の猿も、みんな腹を立ててたんだろうなあ。メス猿までも加わって、そいつをメチャメチャにブチのめした。

早く逃げたから、生き延びられたけれど、うかうかして逃げきれなけりゃあ、ブチ殺されてたろうなあ。

その時に、とても、おかしな事があったんだよ。

ブチのめされてる猿がな、ウンコを漏らしてんだよ。(笑声)

恐怖のあまりウンコを漏らしたんだろうって、説明してしていたけど、同じ様な例があるんだよ。

それは、徳川家康がナ、徳川家康って勿論知ってんだろ。徳川幕府の初代で、ウソついて大阪城の外濠を埋めちゃって豊臣家を全滅させた狸オヤジだ。

この、狸オヤジが若い頃、え? 誰だって生まれた時は赤ん坊で、子供になって、若い衆になって、大人になるんだ。生まれつきの狸オヤジなんてのはないよ。(笑声)

とにかく、この、徳川家康が若い頃、八方ヶ原の合戦で武田信玄に負けて、ひどい目に合った事がある。

昔の戦争はその辺の有ぞう無ぞうは関係ない。狙うのは大将だ。だから、ワーツと攻め込んで来た敵の全員の目標は徳川家康の首だ。

この時は、家康を守るのは、ほんのわずか。必死で逃げたんだけれど、陰武者の忠義な家来が何人か、「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。我こそは三河の城主、徳川家康なり」とか何とか言って、わざわざと討たれ、よく見たらこりゃあ違った。(笑声)

てな具合で、追撃が遅れ、ようやく、味方の城の中に飛び込んで一命をとりとめたって事だが、この時に、あんまり怖かったんで、馬に乗って走りながら、ウンコをもらしてたんだそうだ。(笑声)

江戸時代には幕府の創立者だから、日本一のえら物に祭り上げられ、日光に、でっかいお宮を作られて、「神君」とか言って、神様にされちゃった。

神様が、敵に追われて怖くなり、ウンコもらっしゃったんじゃあ、人間クサくてサマにならないなあ。(笑声)

でも家康の偉い所はこの時の怖さを、一生忘れないようにしようとした事だ。

家康の肖像の中に一枚、目を大きく見開いて口を歪ませて、顔を恐怖に引きつらしている絵がある。

この時の怖かった事を絵に描かせ、絶えずこの絵を見て真剣に人生に対峙しようとしたのは偉い。

諺の「喉元過ぎれば、熱さを忘る」の逆だよな。

 

 所で、あのチンパンジーのウンコと、徳川家康のウンコとは、少しばかり、違うような気がする。

徳川家康の方は確かに恐怖のあまりだが、チンパンジーの方はどうかって言うと、クサムシって言う虫は、敵にやられそうになると、猛烈にいやなクサイ臭いを出して、相手を追い払う。

このようなのは、イタチやスカンクも同じだ。

だから、自分がウンコを出して、場合によっちゃあ体じゅうウンコまみれになって、(笑声) こりゃあ臭くてたまらねえと敵がひるんだすきに、逃げちゃおうって言う作戦じゃあないかなあ。

つまりスカンク式脱出作戦という訳だ。(笑声)

君達も、もし、大勢にいじめられた時は、こう言う手がある事を知っててもいいと思うよ。(笑声)

オヤ、これは欠礼(ケツレイ)申し上げました。(笑声) 

 

<脱線千一夜 第25話> 


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