影武者と人柱

 

 瓜の仲間にヘチマって言うのがある。キュウリの親分みたいな奴だ。

さて、このヘチマってのは、何語だろうね。

メロンは英語、キュウリは日本語、スイカも西瓜と書いて日本語。さて、ヘチマはって言うと、これもどうやら日本語らしい。

じゃあ、なぜ日本語かって言うと、本当は「唐瓜」で「トウリ」と言う。

何で「トウリ」が「ヘチマ」になったかと言うと、君達は、イロハ歌を知ってるだろう。

「色は匂えど、散りぬるを、我が世たれぞ、常ならむ、有為の奥山、今日越えて、浅き夢見路、酔いもせず」って言う歌だが、この初めの方を見ると「イロハニホヘトチリヌルオ」といった所で「ト」は「ヘ」と「チ」の間にある。

つまり、「トウリ」の「ト」は「ヘ」と「チ」の間、つまりマだ。だから、「トウリ」と言わずに「ヘチマ」(笑声)

 

 じゃあ、よく、あいつは「エッチ」だ、なんて言うけど、「エッチ」って何だい。(笑声)

何? 「GIま」、なるほど、GIってのはアメリカ兵の事だが、この言葉が出来たのは日本がアメリカに占領されてた時だから、うかつに、アメリカ兵をバカには出来ない時代だ。

そうだな。今、誰か言ったように、変態性欲の頭字の「へ」のローマ字からだ。

じゃあ「変態性欲」って何だろう、なんて、ちょっときわどい話になって来たがね。(笑声)

何? チカン、うん、よくチカンの様なのを「エッチ」って言うけど、あれは健康な性欲だ。(笑声)

ただし、発散の過程に異常性があるけれど。(笑声)

本当の 変態性欲ってのは、男が男を好きになる。女が女を好きになる。そのほか、人形を好きになる。絵の中の女が忘れられない。なんてのがそうだ。

中には、自分の事を好きになっちゃう。自分に惚れ惚れしてしまう。自分が好きで好きでたまらない。(笑声)

そうだな。英語の時間に習うかも知れないが、ギリシャ神話のナーシサスだな。

まあ、これは、あまりに神秘に満ち満ちて我々俗人の伺い知れぬ所だろうが、身近にはホモとかレズなんてのは、みんながよく知ってる事だ。

中には、商売と割り切ってやってるゲイバーなんてのもあるが、ハンサムな男の子に対して、髭面の変な男が「俺はお前が大好きだ。絶対に離れないでくれ」なんてほっぺたにチューしたら、どうダロ。(笑声)

考えただけでもゾーツとするけど、本人は大真面目なんだ。嫌がって逃げたりでもすりゃあ、首つって死んじゃうかもしれないぞ。(笑声)

甲府の駅前に大きい銅像があるの知ってるな。

そうだ。武田信玄の銅像だ。すごい貫禄でえばりくさってるだろう。

じゃあ、あんな奴に男の子が「君が大好きだ。別れないでくれ」なんて言われて抱きつかれたらどうだ。(笑声)

所がだよ。武田信玄が男の友達に出した手紙が、今でも残ってるんだよ。

「戦争をしてるから、今は離れ離れになっているけど、残念だ。早く君と会いたい。会いたくってたまらない。ああ、会いたいナア、ほかの女を好きになんのはかまわないけど、ほかの男を好きになったら打ち首だぞ」(笑声)

まあ、そこまでは書かなかったにしても、哀切で涙がこぼれるような手紙だ。案外だろ。

何故かって言うとナ。この時の武田軍は、親分より子分が偉い。大政、小政に、森の石松なんて冗談は君達には通じないな。

武田軍の第一の軍師は、メッカチでビッコの山本勘助だ。これが大した男で武田軍を精強にしたてた兵学者だ。

今じゃぁ、メッカチとかビッコなんて言ったら、差別語だって怒られるから、つまり、目と足の不自由な人って言うんだね。

この組には、目や手や足の不自由な子はいないけど、頭の中身が不自由な子が大勢いるんじゃないか。(笑声)

この山本勘助がいろいろと秘策を練って武田軍を強力な軍団に仕上げていった。

武田信玄は自分の父親を「あんたみたいなマヌケじゃあ、武田は滅ろんじゃう、俺が全部取り仕切る」って言って、追放して、自分が乗っ取ったんだが、これは子分達がやったクーデターかも知れない。

武田信玄はどっちかと言えばヘナヘナ男だったんじゃあないかと思う。

そこで山本勘助を中心として、えらぶつ達が相談して、家来の中から出来るだけ、偉そうで強そうな奴を選んで影武者にしたんだろう。

影武者ってのは大将じゃないのに大将に見せかけておく人間だ。

これを、すごく強そうにしておけば、敵はびっくりして、あんな奴と戦ったって勝ち目はないって、早々に逃げ出っしゃうだろうし、味方は、こんな強そうな大将だったら必ず勝つぞって訳で、勇気百倍しちゃうだろう。

まあ、そんな訳で、影武者になった奴は、家来がへーつとひれ伏すからいい気分だろうが、負けちゃったら、信玄の替わりに、第一番に首を取られる。(笑声)

勝てばいいけど、負けたら終わり。

でも、もっとひどいのがある。影武者は負けたら終わりだが、勝っても負けても終わりってのも有った。

お城にはお茶坊主ってのが、何人もいる。仕事ってのは普段は何にもない。あってもせいぜい殿様にお茶を出す位だろう。

ところが、このお茶坊主が、大事な仕事をする時がある。

さあ、合戦だ。って言う訳で、よろい、ひたたれ、弓矢や刀を持って軍隊が出発する時だ。

何だって? 必ず勝ってくれって仏様にお祈りをする。

それじゃあ、アメリカの従軍牧師ぐらいのもんだ。

もっと手厳しいんだ。誰か知ってるかな。

ここまでは知らないか。

軍隊が出発する時、お城の庭にずっと並んで座らせられてナ。お経を読まされる。

その後ろから侍が、刀でヤッとばかりに、首を切って殺してしまう。

味方の人間を殺して一体どんな訳だ。

フム、その通り、人柱だ。

どうぞ神様仏様、自分達に勝利のお恵みを、ってわけで、人間を「いけにえ」として、捧げる訳だ。

つまり、お前達、頼むからお化けになって出て来て、敵を怖がらせてくれって訳だろう。(笑声)

 

 これも昔の話だが、ある川に橋を架けたが、何回やっても壊れてしまう。

これはどうも神様か仏様のたたりに違いない。人柱を捧げりゃあいいだろう、なんて誰かが言い出したが、人柱のなり手がいない。当たり前だよな。(笑声)

じゃあ、言いだしっぺだ。お前が人柱になれって、殺されちゃった奴がいたそうだよ。(笑声)

 

<脱線千一夜 第30話>  


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