原爆とキリスト教の牧師

 

 原子爆弾を積んだ爆撃機が、日本に向かって出発する時に、アメリカの従軍牧師が、その爆撃機の乗組員の上に神の加護がありますようにって、祈って、それから飛んで来た爆撃機が落とした原子爆弾で、大勢の日本人を一瞬のうちに蒸発させた。

その中には敬謙なキリスト教徒もいたろう。

又、沢山のキリスト教会をメチャメチャに破壊したなんて、全く、キリスト教なんて、都合のいいもんさね。

君達の家の中にキリスト教の家があったら申し訳ないけれど、この事一つだけでも、先生はキリスト教大嫌いだった。

江戸時代にキリスト教は弾圧され、島原に集まって幕府に反抗したキリスト教信者は、老若男女皆殺しになったけど、天草四郎はキリストの生まれ替わりで、海の上を歩く事が出来たとか、いつか、空から、天使の軍隊が降ってきて幕府軍は降参するなんて、本気で信じてたんだから、バカな話さね。

その後も、天国を信じ、キリスト教から改宗しないんで、鼻をそがれたり耳を切りとられたり、死刑にされた信者が大勢いた事は、みんなも知ってんだろう。

もっとも、宗教には、どれにも気違いめいた所があって、近くは、オウム真理教の事件、古くは、マホメットが回教徒の軍隊を率いて戦ってた時、コーラン、つまり回教のお経の為に死んだ者は、天国に生まれ替わり、直ったその傷口は、美しく輝き、麗しく香り、三千人の、ものすごくキレイナ女達をメカケ、つまり愛人にし、(笑声) 一万人の奴隷を自由に使う事が出来る、なーんて事を本気にして、命構わず夢中で戦ったんだそうだ。

全く、可哀そうな話だね。

 

 所で、原子爆弾の話に戻るけれど、大分以前に亡くなったジョージ・ザベルカと言う牧師さんの事だ。

この人は従軍牧師として、原爆を積んだ爆撃機に栄光あれと、ミサをして祈った人だけれど、終戦後、広島や長崎を訪れてガク然とした。

まさか、自分が送り出した爆撃機が落とした原爆が、戦争に関係のない一般の人々を、これほどまで残酷に焼き尽くしたかを知り、キリスト教の信者として、加害者の側から、原子爆弾の罪を問い、原水爆反対の平和の巡礼を続け、アメリカの各地で講演し、原水爆禁止世界大会の平和大行進にも参加した。

彼がアメリカだけでなく、世界の各地で人々に平和を説きながら、手渡していた平和のバッチには、次のように書かれていたと言う。

 DO SOMETHING FOR PEACE

 どうだ、この英語分かるか?

何?「平和の為に何かやれ」だって、あんまりうまい訳とは言えないな。

何かやれって言うんじゃなくって、もっとうまい訳はないか。

解説には「平和のために行動を」ってある。

 

 まあ、このように、アメリカ側でも、原爆を落とした反省が、少しでもあれば、広島や長崎で死んだ多くの人達の魂も救われるってもんだ。

それが、原爆の為に戦争の終結が早まって、多くのアメリカ人や日本人の生命が救われた。なんて事、本気で信じてる奴が大勢いるんだ。

日本では、もう戦争は勝ち目はないってわけで、降参するチャンスをうかがっていたが、アメリカの方で、降参したら天皇陛下を戦争犯罪人にするかも知れないぞって日本を脅かして、戦争を引き延ばしていたんだ。

そうして、原爆がどの位威力があるか、その実験場として広島や長崎、小倉、京都、新潟など、あまり爆撃しないでとっておいたんだ。

京都や奈良だって入っているんだぞ。

それで、原爆落とした後になってから、ようやく、天皇には手出しをしないからって言って安心させて、日本を降参させて、戦争を終えたんだ。

だから初めっから、天皇陛下には手出ししないよって言ってれば、原爆無しで早く平和が来ただろう。

何故、これ程までアメリカは原爆を使いたかったんだろうか。

そうだ、ロシア、昔のソ連に負けたくなかったんだ。

俺はこんなすごい物持ってるんだぞ。俺に逆らったらひどい目に会うぞって、脅かしなんだ。

だから、何としても日本かドイツで使いたい。ドイツは原爆が出来る前に降参しちゃったから、後は、「降参したら天皇を死刑にするぞ」って、原爆が出来るまで、日本が降参しないように引き延ばしたんだ。

あと、もう一つの理由は、原爆を作るのにものすごくお金がかかったんだ。

そうすると、この事を、議会や国民に納得させるには、原爆が出来たから、大勢のアメリカ兵の命が助かったと、ウソでもいいから言わなけりゃあならない。

戦争が続いていたら、何万人のアメリカ兵の命が亡くなったなんて、全くのウソだ。

だけど、これを信じてるアメリカ人が、大勢いるから始末に困る。

 

 一方、イギリスじゃあどうかと言うと、日本で「ヒロシマ」って言う反戦映画作った時、日本人はしつっこく原爆の事を恨んでる。自分で戦争始めたんだから原爆にやられる位、当たり前だ。日本人位、蛇のようにしつっこく、呪い、恨み続けてる恐ろしい奴はいないって、大騒ぎになったんだ。

この「ヒロシマ」って映画は、見ようと思っているうちに、終わってしまい、それから、気をつけてテレビ欄を見てるんだが、全然やらない。

日本の政治家や経済人達は、こんな映画を出すと、イギリス人が感情を害し、売れる物も売れなくなちゃう。

つまり、自分達の金儲けにさしさわりがあるってわけなんだろう。

外国の顔色うかがいばかりやってるザマさ。

よく「日本は世界の孤児にならないように」なーんて言ってる話があるけど、つまり、商売がうまくいかないと困るから、外国のご機嫌とれって言う事だ。

商売して儲かるのは政治家や経済人だけで、一般の民衆は高い品物を買わされ、税金ギューギューしぼられて、フーフー言って生活してんだ。

どこだかの外国の新聞記者が言ってたそうだ。よく日本人はこんな高い物を買わされ、高い税金取り上げられて黙って生活してるが、呆れたもんだってな。

政治家や経済人が先に立って、こんな事を言われないような国にして欲しいな。

 

 まあ、とにかく、アメリカ人はノアの箱船なんか信じてるおかしな連中かと思ったら、この牧師さんのように世界平和の為に活躍した偉い人もいる。

今度、学校に呼んで講演してもらうか。

何? 英語じゃ解らない。

英語の先生に通訳してもらえばいいよ。

何? ジョージさんはもう死んじゃったか。

そうだ。こりゃあ残念だったな。

代りに所ジョージにやってもらうと言うわけにはいかないからな。(笑声) 

 

<脱線千一夜 第34話>


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