二重基準

 

 先生は数学の先生だから図形の問題も教えて、テストの時には証明の問題も出す。

イヤな顔をした奴、大勢いたな。

だけど先生は面白がって君達をイジめている訳じゃあない。

どの数学の先生もやっているんだな。

そうして、証明問題は先生にとっても大変なんだ。

というのは、苦しまぎれに、分かってもいないのに、いかにも分かっているような証明を書いて、先生をダマそうとする奴がいる。(笑声)

書いてありゃ良いってもんじゃあない。

丁度、道を教えるように、正しく文章で書かなけりゃならない。

ただ曲ると言っても左だか右だか分からないし、まして五叉路や六叉路ともなると、斜め左でガソリンスタンドとスーパーとの間とか詳しく教えないと迷ってしまう。

先生はある時、道を聞いたら、三百メートル位と言われたのですぐだろうと思ったら、なかなか着かない。

なんと三十分もかかった事がある。(笑声)

 

 さて、所で今ここに二枚の答案がある。

証明の問題についての配点は10点とする。

きちんと書いてあれば10点、殆ど合ってりゃあ9点か8点、反対に間違いだらけなら2点か1点、どうしようもないのは0点だ。

まず、花子さんの答案を見る。

全然メチャクチャで、何にも分かっちゃいない。然し、この証明で必要な△ABCという言葉が一ヶ所書いてある。

ウム、よくこの△ABCを発見した。そうして、花子さん、君はいい子だ。授業中は静かにしている。本当は寝てるのかも知れないが。(笑声)

それに先生が顧問をしている部活で部長をしていて一生懸命に下級生の面倒を見ている。ヨシ! 10点迄は上げられないけど、9点にしておく。

次に太郎君の答案、どうもこいつは虫が好かない。第一に顔が悪い。怪獣的だ。(笑声)

先生を馬鹿にしたような目で見る。字が汚い。花子さんの方がマシだ。

そうして証明は、うん、一応は筋が通っている。

教科書と全く同じに書いてある。これでは独創性がない。マネなら猿でも出来る。(笑声)

所で、おやおや、ここはまずい。△ABCと書くべき所を△ACBになっている所が一ヶ所ある。ダメダ。いくら他の所が合っていても、話が通じない。零点だ、と思うがこれだけ書いたんだから1点やる。

このうるさい先生が1点くれたんだから有難いと思え。(笑声)

なんて言うのはどうだろう。何? 先生、女好きでスケベだって。(笑声)

スケベはとにかく、これはヒイキだな。何故ヒイキしたかって言うと、花子さんの「花」という字をよく見てごらん。

え、そんなこと小学校の時から知ってる? へえ、みんな博識だよな。勉強もその位に教える前から分かってりゃあ大したもんだけどなあ。(笑声)

 

 まあ、ここで先生が言いたいのは基準という事だ。

いくつか重要なポイントを選んで、これが出来ていれば何点とか決めてあれば不公平は起きない。

その基準で採点すりゃあ逆に花子さんは一点、太郎君は九点になるだろう。

こんな風にエコヒイキをするのは二重基準という。

一番いい例がイラクとイスラエルに対する誰かさんの態度だ。

両方とも国連の取り決めに従わないで、勝手な事をしているんだが、イスラエルなんか原爆持ってるらしいのは公然の秘密らしいが何とも言わず、イラクだけを大問題にして、こっそりと原爆を作ろうとしているイラクは国連の敵だ、イラクと戦わない国も国連の敵だなんて大騒ぎを始めた。

日本は自衛隊という大きな軍隊持ってんのに、ケチな掃海艇しか出さないとはけしからん、せめて金うんとこさ出せ。なんて訳でたくさんの軍資金をボラレタ。

だけれど、後になって見れば、誰も日本の事を感謝してない。ものすごくたくさんの金払ったのに当たり前だと思われてる。日本は物凄い金持ちなんだから、金出すのは当然だと思われてるらしい。

大昔のマルコポーロが書いた、東方見聞録を、本気にしてる奴が多いらしい。家も着物も金、道も金で舗装してあると思ってるのかも知れない。(笑声)

とにかく、金を直接に払った政府は、自分の金じゃない、税金つまり国民から集めた金だから構やぁしないって訳だろう。

 

 こんな時によく使われるのが「日本は世界の孤児になるな」なんて言葉だ。

以前にけしからん人種差別をしていて、世界中の国から鼻つまみで経済制裁を受けていた南アフリカ連邦に、金さえ儲かりゃいいって商売やって他の国を裏切ってたのは日本だ。

でもその時には「日本は世界の孤児になるな」なんて事全然出ない。

つまり日本の権力者は商人と結束して大儲けやってるんだから、自分の為にならない事は新聞に出さない、といったように世論を誘導しているんだ。

今回のように、外国に金払わなければ付き合いが悪くなり、商売に差し障りがあると言う訳で「日本は世界の孤児になるな」なんて言って大騒ぎする。

アメリカはユダヤ人が金融界を大きく支配してるから、イスラエルに嫌な顔を出来ないのだが、日本も同じような物なのだろう。

 

 これは日本の国内の事だが、以前、総理大臣が渋谷でとても安く土地を借りていた事がある。

固定資産税なんかの税金だけでも月に何十万円もかかる土地だが、そこの地代が何と十万円足らず。

つまり地主は年間一千万円も損をしている。つまり、地主は総理大臣に毎年一千万円もの寄付をしている訳だ。

だったらこれは贈与に当たり、税務署にたくさん贈与税を払わなけりゃいけない。所が、全然払ってないらしい。

先生なんかが、うっかりして税金の申告を間違えると、電話がかかって来て怒られ、追徴金をがっぽり取られる。

政治家にはエコヒイキしてるから、こんなけしからん事はないと思って、渋谷税務署に電話してやった。(笑声)

あんた達は税金の計算にかけてはプロなんでしょう。小学生だって分かるこんな計算を何で間違えるんですか。一般の民衆には手厳しく、政治家には大アマなのはけしからんじゃないですか。こんな二重基準をやらないで、きちんと公正にしなさいよって教育してやった。(笑声)

そうしたら、そういった事については、各個人の秘密についてなので、法律で決まっている通りお答えする事は出来ません。法律に違反するので、知ってるけど言いませんとキタヨ。(笑声)

 

<脱線千一夜 第47話> 


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