オリンピック

 

 オリンピックで幾つメダルを取れるか、目の色を変えていて、新聞もテレビも大騒ぎだ。

でも、それは本当のスポーツのあり方からすれば、おかしな物じゃないかなと思うんだケンドナ。

今のような変チョコリンなオリンピックにした元凶はと言うと、これが、なんと君達も知っているナチスドイツのヒットラーなんだ。

このヒットラーという奴が、ベルリンオリンピックを、侵略戦争の準備のために上手に使ったんだ。

まず、聖火リレーだが、そんな物はそれ以前にはなかったんだが、ギリシャの聖オリンポスの山上で巫女達により太陽光線によって点じられた聖火は、東ヨーロッパをランナーによって運ばれ、ベルリンの聖火台まで持ってこられる。

これがそもそも曲者なんだ。

いずれ、東ヨーロッパを戦車で蹂躙(じゅうりん)しようと思っていたヒットラーは、聖火リレーの準備という口実で、大勢のスパイを東ヨーロッパに送り込み、攻撃するコースの下調べをやってのけた。

その次にやったのは、ドイツ国民全体を、キチガイじみた愛国者にしてしまう事だ。

これはスポーツが1番、我らがドイツ民族は神に選ばれた人種で、世界で1番。

だからドイツが1番強いとドイツ国民に吹き込み、絶対に他の国には負けないと自信を持たせた。

自信と言うよりも、自惚れだろうがね。

その為に、ものすごく金を使って選手達の訓練をした。

そもそもオリンピックは、アマチュアつまり素人の物だから、普通に会社行って働いて、余った自分の時間に練習をするというのが正しいんだが、そんなこっちゃメダル取るどころか1番ペケになっちゃう。

だから仕事なんかやらせないで、朝から晩まで練習に次ぐ練習、良いコーチも雇い、経験のある医者もつけて健康管理する。

と言うわけで、こんなに粒揃いに優秀な選手が数多くひしめいているドイツは、世界中の国を相手に戦っても負けっこないと言う事を、自国民に見せつけた。

だけどそれから10年近く経ってから、ドイツは負け、ヒットラーは自殺した。

自殺の前に「ドイツ軍はドイツの全ての物を破壊せよ」と言う命令を出した、つまり無理心中しようとしたそうだが、さすがに、これは、実行されなかった。

と言うわけでドイツは平和国家として生まれ変わったが、ヒットラーが始めた「オリンピックは国家の力を見せつける所」という考え方は、それ以後、各国に伝えられて、ますます膨らんでしまった。

理由はと言うと、アメリカとソ連の冷戦構造がある。

自分達の陣営の力を見せつけないと、子分の国が付いてこない。

その為にじゃんじゃんと薬を使おうと問題じゃないってわけで、オリンピックはヒットラーの亡霊に支配されてしまった。

ヒットラーは戦争じゃ負けたが、オリンピックの変な考え方では、世界中を支配してしまった。

 

 でもな、シドニーオリンピックで、大分不評だったのに、開会式の時に日本選手達の服装が、如何にも可笑しかったことが・・・・・ある。

まるで、漫画のガッチャマンみたいだったなあ。(笑声)

見た者、どの位いるかな。みんな見てるね。とにかく、あんな、ヘナチョコな、訳の分からんマント来て、出て来たのにはたまげたな。赤いブレザーで、白いズボンはいて、キリッと固めた方が、格好いいんだけどな。

何ともまあトンマなカッコだったなあ。ああ言うのが、上から読んでも、下から読んでも「トンマなマント」(板書)って言うんだろう。(笑声)

オーストラリアの自然を虹の色でイメージしたって言うんだけれど、あまりにもシュールリアリズムで、俗人には、さっぱり分からないね。

オリンピック委員会には、ジャンジャン抗議の電話が来たらしいが、先生の考えでは、うん、あれも又いいんじゃないかとも思える節があるので、あながち、悪口ばかり言えたもんじゃないと思う。

と言うのは、先生一人の考えで、当たってるかどうか分かんないけどな。

選手全員が、きちんとした制服を着て、一糸乱れぬ隊列を組んで、颯爽と行進していったら、一体、何を連想するかって。

そうだよ。当然、軍隊だよな。

たまにテレビで見るが、学徒動員の時、神宮外苑で物凄い雨の中、これから戦場に向かう大学生達の、気合いの入った行進を見た者もいるだろう。

選手全員が、きちんとした制服を着て、一糸乱れぬ隊列を組んで、颯爽と行進していったら、おやおや、日本は平和国家だなんて口じゃ言ってるが、こりゃ驚いた。

一般の民衆に迄、軍事教練やってるんだな。

聞く所によると、民間の大したことはない新興宗教でも毒ガスを作ったと言うが、国家の力で、もっと凄い毒ガスを作って、世界中の大都市にばらまいて、世界征服をたくらんでいるに違いない。

てな感じで、つまらぬ誤解されるよりも、素っ頓狂な五色のマントを着て、童話の登場人物のようにして出て来た方がいい。

これこの通り、日本は漫画チックな平和国家ですよと言うことを、世界中に教えてやる為にな。

 

 とにかく、スポーツを通じて親交するって言うのは、なかなか難しいもんだよな。

「日本ガンバレ!」と言うのは、当たり前の応援だが、ついつい「○○負けろ!」になっちゃう。(笑声)

「○○負けろ! 滑れ! つまづけ! やったあ! 転がった! うわっはっはっは ザマーカンカン そんなツラしてやがって日本に勝てる訳ねえんだよ。ヘッヘッヘ これで金が一つ増えたぞ」(笑声)

なんて喜んでて、よくよく見たら、勝ったのは日本に似た国旗の国だったなんてーんじゃ、どうしようもねえな。(笑声)

 

<脱線千一夜 第67話>


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