生きるために食うか、食うために生きるか

 

 昔からよく言われる言葉に、生きる為に食うか、食う為に生きるかというのがある。(笑声) 聞いたことある者いるだろう。

さて、おのおの方、このどちらが正しいと思し召されるかね。え、食う為に生きるが正しいにきまってる、それなのにセコセコ勉強させられるなんて心外だって。(笑声)

成る程、生きてるからこそ色々と旨い物が食えるけど、死んじまったら何にも食えない、命あってのモノダネだ、なーんて食い意地が洋服着て歩いてるような奴もいる。

だけど、そもそもが、生きる為に食うんだよな。

食べなきゃ生命の維持に必要な栄養を得られない。仙人は霞を食って生きているなんて言うが、仙人だって霞を食う、まして人間ならばと言うわけだ。

生きるために食わなきゃならんと言うわけで、これを目標と手段と言った風に分けると、つまり生きるという目標を達成するために、食うという手段に訴える。

更に一歩進むと、生きるというのは、目標じゃなくって、人間として悔いのない一生を過ごすという目標のための手段である訳なんだ。

 

 所で、いま流行のITもそうだ。

政治家や経済人達は、アメリカでIT革命があって、とても景気がいいから、バスに乗り遅れるなってばかり、あっちでもこっちでもコンピュータ時代、IT革命って騒いでるが、何にも分かっちゃいない。

ITの事をイットだなんて言って笑われた政治家もいる。

ITって何だい、え? インターネット・テクノロジー。残念、少し違う。そうだ。インフォーメイション・テクノロジーだな。

日本語で何て言うんかな。うん。情報通信技術か。

 

 情報通信技術というのは、大昔には狼煙(のろし)だとか太鼓や伝書鳩や手旗信号、夜だったら光、昼間でも鏡を使って通信するのは小説なんかにあるな。

電気を使うようになれば、有線電信、それが有線電話と無線電信に進歩し、それが無線電話つまりラジオになる。

映像については、一枚の写真を送るのに何分もかかっていた電送写真が、一秒に何十枚も送れ、ブラウン管の上に表示するテレビになる。

このような技術が情報通信技術だが、ITと言った時は、つまりコンピューターの中のソフトがばバーーーンと一気に送れる技術だ。

言うならば、明日テストだけど、弟とゲームやってて全然勉強してない。困っちゃって、天才の兄貴に、頼むから中学の数学インストールしてくれよ、なんて言って頭と頭を光ケーブルで繋いで、兄貴の知識を全部貰っちゃう。(笑声) よし、これでバッチシだなんて思って教室に入ろうとしたら、入口に飛行場にあるような電磁石のゲートがあって、違法カンニングコピー発見なんてビビーとブザーが鳴り、さっきインストールしたばかりのファイルがまっさらに成っちゃう。(笑声)

 

 IT時代と言ってもそんな事は夢物語だが、今、ホーム・ページって言うのがあるのはみんな知ってるな。

え、そんなの知らねえ。(笑声) よく見るだろ。http://wwwナントカカントカ なんて奴だ。あれだったら知ってるか。あれホーム・ページって言うんだ。覚えとけよ。知らないとITの事イットだなんて言った政治家みたいにバカにされるぞ。(笑声)

 

 このホーム・ページは大分普及してきて、官庁や会社だけでなく、一般の家庭でも開いているのが多くなってきた。

このように普及したので、テレビや本なんかにホーム・ページの作り方なんてのをよく見かけるが、必ずと言ってもいい位に、注意してある事がある。

何かって言うとな、さっき話したような手段と目的のことだ。ホーム・ページって言うのはあくまでも手段であって、その目的は一体何かと言う事だ。

ここがアマチュア無線とは違っている所で、アマチュア無線の方は、地球上の多くのアマチュア無線局が電波で通信しあう事、それ自身が目的で、アマチュア無線で日本人と中国人が、朝鮮半島問題について論戦したなんて聞いたこと無い。(笑声)

つまりアマチュア無線には通信の内容は二の次だが、ホーム・ページは内容が問題だ。

内容って言ったら、つまり、文章で表現するわけだから、夏休みの作文の宿題書くのに8月31日の夜に仕方なしにやるようじゃ駄目。

日記の宿題にしても「朝起きて朝飯食べ、お昼に昼飯食べ、夜に風呂に入り夕飯食べ、テレビ見て寝ました。」(笑声) 何日かたつと面倒になり「昨日と同じ」そのうちに「〃(チョンチョン)」(笑声) とにかく、そんな筆無精な人間にゃ出来る訳無い。

旅行とか釣りとか、登山、園芸とか言った趣味のある人が、自分の体験を書いたり、写真や絵で発表したりする場がホーム・ページなんだ。

だからホーム・ページは、自分が何か発表するという目的の為の手段と言っていいだろう。

 

 実はこれに似た話がある。それはと言うと、ある少年が、オレは絶対に偉くなってやる。将来は総理大臣になってやる。と言うバカでかい希望を持っていた。(笑声)

笑っちゃいけない。大昔に中国で劉邦という男が「いつの日かオレは大中国の王になってやる」と言って回りの物に笑われたが、その時に「燕雀いずくんぞ大鵬の志を知らんや」(ちっぽけな小鳥みたいな奴ばらに、どうしてオレのような「おおとり」の気持ちが分かってたまるもんか)と言ったという。嘘かも知れんけどな。(笑声)

後世の者がそんなこと付け足したんだろうが、とにかくこの劉邦と言う男は誰かね。

そうだな。秦を滅ぼし、礎に勝って中国の王となった漢の高祖だな。

日本じゃハナタレガキ大将の日吉丸が努力と運と要領で這い上がって、最後に太閤という日本最高の位になったが、これも、劉邦と比べりゃ、物の数じゃないって言われてる。

だけど、まあこんな事から、生まれは低くても努力次第で出世できる「末は博士か大臣か」なんて言葉があって、一生懸命に努力すりゃ必ず報われる。だから大人しく働け。と、国民を統治する方便に使った。

そんなわけで、日米戦で日本が負けて、一応は民主主義になってからは、この「末は博士か大臣か」は死語になった。

所が、これを本気で信念にしてた奴がいたのには驚きだ。とにかく努力の人らしい。

自分さえ良けりゃ、他の奴がどうなろうと知ったこっちゃ無いというのを信条とし、自分に都合のいい、引き上げてくれる奴に必死でおべっか使い、そうでない者は、構うもんかと踏み台にする。(笑声)

やがて大臣の秘書になり、そいつの引きで比例区の裾の方に入れて貰い、念願の議員になり、そうして大臣の椅子も何とか手に入れたという奴だが大したもんだ。

 

 所でだな。この男が何の為に大臣になったのだろうか。

え、金儲け。(笑声) まあ、それに近いのだろう。つまり大臣になることが奴さんの目標なんだ。

かつての田中正造のように、農民のために足尾銅山の鉱毒を無くそうと言ったような問題に取り組んでいない。

田中正造にとっては、こういった大きい問題に比べれば、自分が議員だろうが無かろうが問題じゃ無いというわけだ。

所が、そういった問題意識を持たないで、何でもかんでも議員や大臣になって権力を持ち、金儲けしたいという者が多く、問題意識がないから政治家が官僚に振り回されているなんて言われる。

官僚が書いた原稿を読むだけ、それも予め読む位のことはすりゃいいのに、内容も何にも分からず国会で初めて読んで、原稿を一枚すっとばっしゃったなんて事があった。(笑声)

とにかく、政策なんてのは頭の中にない。じぶんが議員でいることが最終目的だと言う人間は、こんな、間抜けな事をやる。

 

 でも、残念ながらこういった人間が日本の政治を牛耳ってるんだ。

この間、ある座談会である議員が、政治には金がかかると言っていたけれど、それに対して別の人が、そんな事言ってるから政界浄化ができないと反論してたが、まさにその通りだ。

金を使わないと当選しないようなのは、政治家じゃなくて政治屋だな。

いや人間扱いしちゃ勿体ない、国民の血税を食い荒らしてるんだから、寄生虫だ。

君達も選挙権持ったら政治に金がかかるなんて言ってる虫等を、政界から叩き出そうよ。

 

 ま、そんなわけで、まず目的があって、それを達成するために手段を使うのだが、中には目的を達成する為には手段を選ばないと言う困ったのもある。

推薦枠が一人なのにオレより出来るあいつが希望してて、これじゃ受からないから、鉄パイプで闇討ちしてしまえなんてのは駄目だ。(笑声)

 

<脱線千一夜 第74話>


前へ戻る
メニュー
次へ進む