方言

 

 先生が中学2年の時に、ある転校生がクラスに入った。どこから来たのだか知らないが、まあ、普通の奴だったがね。

そいつがあるときに、「ちぇっ! しけてやがら」って言ったんで、みんな、何だろねと思った。と言うのは、我々、東京人には「しけてやがら」って日本語はなかったんだ。そこで辞書引いてみたら「海が荒れる」なんて書いてあった。(笑声)

でもこの「しけてる」なんてスラングは、やがて、東京でも使われるようになった。つまり、「度量がない」と言うことを、さげすんで言う言葉と言ったらいいだろう。

広辞林に出てるかと思って引いてみたけど、出てない。今度、岩波書店に電話して注意してやろうかと思った。(笑声)

「○○○○○○じゃん」と言うのもそうだ。かつて千葉県の方で使われてたのが、浦賀水道を横断して、東京湾の西側の神奈川県に伝わった。そうなると、東京は、東と西から挟撃されて、若者達に、結構、使われるようになった。

 

 昔、新撰組の中に、九州出身の者と、東北出身の者とがいた。九州と東北じゃ、全然言葉が違うから、外国人みたいで困ったろうと思いきや、この二人が、大の仲良しになったと言うから面白い。(笑声)

それぞれに、一般の隊員とは、言葉が通じないと言う悩みがあったので、意気投合したのかも知れない。

そこで、手真似や、漢字で筆談したらしい。漢字は日本全国どこでも通用するからな。九州弁で「おはん」なんて言っても分からないだろうが、「貴殿」と漢字で書けば分かる。

実は、何年か前に、先生が九州に行ったとき、ガイドさんや運転手さん達がお喋りしてる所に行って、テープレコーダーを出して、何か方言を言ってくださいと頼んだ。

すると、一人のガイドさんが、何やら、ぺらぺらって言ったけれど、勿論のこと先生には、何の事やら分からない。他のガイドさんや運転手さん達は、勿論、意味が分かるから笑ってる。一体全体、何て言ったんですかって聞いたら

「今日はお天気が良くて、色々なところをご見物できて、面白かったでしょう。」

との事である。

後でテープレコーダー聞いてみたが、やはり、全然分からない。ひょっとしたら、こっちが分からないのをいい事にして

「お客さん、ずいぶん、おかしな顔してますね。その顔は生まれつきなんですか」

なんて、言ってたのかも知れないな。(笑声)

 

<脱線千一夜 第82話>


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