接触不良とガリオーム

 

 近頃、先生の家のトイレの電気の調子が悪い。入口のスイッチをパチンとやってもつかない。もう一回、力を入れてパチンとやるとつくが、消す時は必ず一回で消える。全く横着ったらありゃしない。(笑声)

こんな奴は、どこの組にも何人かいるよな。授業が始まってもなかなかエンジンが掛からないくせに、終わりのチャイムが鳴る前に、机の上の物を片づけちゃうような奴だ。(笑声)

まあ、こういったことは、昔から、電気物にはよくあった。テレビじゃなくってラジオが主流だった頃、音が出なくなったとき、横をパチンと引っ叩くと、接触不良がなおって、又、鳴り出す。(笑声)

遠くからでも出来るように、新聞紙を丸めて棒を作っておき、鳴らなくなると引っ叩く。これがリモコンの始めだ。(笑声)

 

 こんな風に、電気物じゃボンクラ坊主にカツを入れるように、力を入れてスイッチを押したり、横を引っ叩いたりすると、接触不良が治ることがある。

所が、驚いたことに、コンピューターでもこんな事があった。プログラムには絶対の自信があり、間違ってはいないんだけれど、どうしても動かない。ある所で引っかっかってしまう。困ったもんだという話を聞いた。

だったらそのコンピューターを引っ叩いたらどうだろう。(笑声)

いや、本当にコンピューターを引っ叩いたりすりゃ、壊れちゃう。コンピューターは昔のラジオみたいに、いい加減なもんじゃないからな。だから、電気的に揺すぶりをかけるって訳なんだ。

例えば、ある数字があったら、その数に1をたして、次に1を引く。そうすりゃもとの数になる。だが、こんな事はとても簡単で、やったって多分駄目だろうから、別の方法をやる。

数字情報を文字情報に直し、又、数字情報に戻す。つまり「123」と言う数字を「一二三」と言う文字に直して、又、「123」と言う数字にする。ほんとにバカみたいな事なんだが、それやったら、ぴたりと治ってうまく行ったとのことだった。

 

 何だか、コンピューターの中も昔のラジオのガリオームみたいだな。

何? ガリオーム? 

本当はバリオームと言って、正式の名前はバリアブルレジスタンス、日本語じゃ可変抵抗って言うんだ。

このバリオームが、古くなって調子が悪くなってくると、つまみを回すと、接触不良でスピーカーからガリガリと雑音を出す。ガリガリ言うからバリオームじゃなくってガリオームだ。(笑声)

え? うちのステレオ、つまみ回すとガリガリって音が出る? そりゃ大した物だ。骨董品として高く売れるぞ。(笑声) 

 

<脱線千一夜 第85話>


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