ペリーとクジラとニシン

 

 アメリカのペリーが黒船を率いて日本にやって来て、徳川幕府に開国を迫ったのだが、何故、アメリカは日本を開国させようとしたのだろうか。

ずいぶんと御節介だよな。朝、太陽が出ていても、隣の家はまだ寝てるらしく、雨戸が閉めっぱなしになってる。

「もう10時だよ。いつまでも寝てるんですかね! 坊や、学校遅刻しちゃうよ。旦那、リストラされたからたって、不貞寝してちゃ駄目だよ。そんなザマだから、カミサンに逃げられちゃうんだよ」(笑声)

雨戸叩いて、そんな事、大きな声で怒鳴って見ろ。余計なこと言うな。この御節介野郎めってぶん殴られちゃうな。

だけれど、始めから殴られない用心で、ヘルメットかぶって、鉄パイプ持っていったらどうだろう。(笑声)

これと同じなんだ。ペリーは始めは軍艦四隻じゃ危ない、もっと必要だって言ったらしいけれど、今はこれしか余ってない、これで日本を脅かして来いって言われて、仕方なしに来たんだ、ちょっとばかりは、おっかなびっくりの所もあったらしい。

何故このように、無理して日本の開国を迫ったかと言えば大きく言って二つある。

インド、中国と欧米列強は侵略し、次の目標は日本、おまけにその日本はとても金が安い。これは、かつて佐渡の金山は世界一の金の産出量だったらしい。だから、日本と貿易して、金を買えば物凄く儲かる。

でもこれはアメリカに限らず、どの国でもその恩恵によくせるんだ。他の国と違ってアメリカが、特に日本に求めてた事がある。そうだな。捕鯨船の基地だ。

その頃、アメリカの捕鯨船は北太平洋を縦横に荒らし回ってた。然し、太平洋の西側に捕鯨船の基地がない。基地が無いどころか、海岸に近づくだけで、追い払われる。

もし、日本で水や食料を調達できれば、はるばると太平洋を横断しないですむから、一隻の捕鯨船が三隻分ぐらいのクジラを捕れるってわけだ。

そんなわけで、アメリカの捕鯨船で北太平洋のマッコウクジラは潰滅したって言われる。

 

 だから、今のアメリカで、クジラはカワイイ生き物だから可愛がりましょう。日本人みたいにクジラを殺して食べてしまうのは、まだ野蛮人の性格が残ってるんです、なんて言っても、チャンチャラおかしくて、ヘソが茶を沸かすってもんだ。(笑声)

以前に北氷洋で氷に挟まれてしまったクジラを助けるのに、軍隊まで動員して氷を割り、ヘリコプターでテレビ中継やって、クジラが無事に海に帰って行ったら、全アメリカが歓喜に沸いたそうだ。(笑声)

ま、こんなわけで、かつての頃に比べると、今のクジラは幸せだ。捕鯨船に追いかけられることはない。

だからどんどんと数が増える。数が増えれば餌がいる。

クジラは海の生態系のトップに立ってるんだ。

海の生き物は、まず最初は太陽光線をエネルギーにして繁殖する植物性プランクトン、ここから生命が始まる。

水清くして魚住まずなんて言うけど、この植物性プランクトンがスタートで、植物性プランクトンを動物性プランクトンが食べる、次に動物性プランクトンを小さい魚が食べる。

小さい魚は中くらいの魚の餌、中くらいの魚は大きい魚の餌、大きい魚はクジラとかシャチやアザラシの餌になる。あの、でかいクジラが増えればそれなりに餌を食う。

 

 これからは先生の想像なんだから、あんまり当てにされちゃ困るけどな。

かつて、北海道で物凄くニシンが捕れて、儲けに儲け、ニシン御殿なんて網元の大邸宅が沢山建ったらしいけれど、今は昔、ニシン漁なんてのは全然駄目だ。何か理由があるはずだ。これは、どう考えてもクジラだな。

クジラが増えて、人間の食い物を横取りして食っちゃうんじゃないかと思うんだ。人間が食う前に「お先に頂きマース」なんてな塩梅で、先にみんな食っちゃって、人間の方に来るのはカラッポのお皿だけだ。(笑声)

ニシンだけじゃなくって、マグロもそうじゃないかな。外国じゃ、日本人はマグロが大好きで、寿司や刺身にして食っちゃうから、世界の海からマグロがどんどん減っちゃうなんて言ってる。来年の事言うと鬼が笑うって言うが、マグロの事言うとクジラが笑うってもんかも知れないぞ。

でも、クジラにゃ言い分がある。ニシンもマグロも大自然の物だ。大自然の物を食って何が悪い。お前ら人間共の捕まえ方が下手なんだ。悔しかったら、俺達の先にニシンでもマグロでも捕まえてみろ、出来もしねえのにバカこくな、ザマーミヤガレ、カッパノヘダ、チャンチャン、なんて大あぐらでタンカ切っちゃったり、しちゃってな。(笑声)

でもさ、自然の物を食うと言うんならまだいい。以前に北の海でアザラシを捕ってその腹の中を開けてみたら、旨そうなサケが何匹も入ってたそうだ。

つまり、人間が一生懸命に養殖して卵から稚魚に育て、海に放流したのをみんな食っちゃうんだろう。だから、昔に比べて川に戻ってくるサケが大分減ったとのことだ。こうなるとクジラ共は、魚屋さんの店先の魚をかっぱらいにくるドラネコと同じだな。

話がそれるが、何でドラネコって言うんだよ。え? ドラエモンの仲間だから?(笑声) いや、そりゃ反対だよ。ドラネコという言葉からドラエモンて名が付けられたんだ。「ドラネコ」ってのは「ノラネコ」と言う言葉と「ドロボウネコ」って言う言葉が、合体変身したんだ。(笑声)

 

 さて、このドラネコならぬ、ドラクジラ共は人間が一生懸命に養殖して放流しているサケやマスを食い散らして、この大自然の弱肉強食の世界ではこれが当然とばかり大いばりしてるんだから、厳罰を加えなけりゃいけない。

このような極悪人ならぬ極悪ドラクジラにどのような刑罰を加えるか、先生が裁判官で、みんなは陪審員だ。(笑声)

さあ、被告の極悪ドラクジラ、人間が苦心して放流した魚を横取りし、強奪した罪は重い。無罪か。死刑か。(笑声・死刑の声あり) よし、陪審員諸君の全員一致の決定により、クジラを死刑に処す。(笑声)

なんて言っちゃっても駄目だよな。クジラはカワイイ動物だとマインドコントロールされてる奴が多いんだ。メクジラを立てて怒り出すよ。(笑声)

 

<脱線千一夜 第86話>


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