テロ礼賛

 

 アメリカのブッシュ大統領は同時多発テロの時にはいささかうろたえて、事もあろうに十字軍なんか持ち出して、イスラムと対決しようなんて、バカな事を言い出したりしたが、その後、すぐに言い直して、旨い塩梅に世論を誘導したな。

つまり、テロは悪であって、それと戦うアメリカは正義の味方、俺達に荷担しない国は世界平和の敵だと、旨く理屈のすり替えをやった。

そうして、アメリカ人なんて単純なのが揃ってんだから、簡単に世論操作されて、アルカイダをやっつけろ、ビンラディンは悪魔の申し子だと、丁度、日中戦争や日米戦争の時の日本人みたいに、のぼせ上がって騒いでる。(笑声)

先生も子供の頃にはマインドコントロールされて、のぼせ上がって夢中で騒いでた口だから、他人がのぼせ上がっているのを見るとよく分かる。(笑声)

中国やロシヤなんか自分の国の中に少数民族がいて独立運動なんかしてると、こりゃしめた。アイツラをやっつけるいい口実が出来たと、テロ絶滅の為に世界の国は手をたづさえて戦え、テロ支援国家をぶっ潰せなんて言ってるが、つまりは、自分の得になる事だからだよな。

アメリカ人の中でも対イスラエル外交の問題と分かってる者がいても、全然と言っていいくらい、正しい声は出てこない。

飛行機にぶち当てられた世界貿易センターのビルは、金と権力を持ったユダヤの巣窟で、アメリカのユダヤ人は全体の3パーセントで、まあ少数民族なんだが、彼等の金が物を言ってるんだな。

 

 このように旨く論理のすり替えが出来るのは、これを商売にしてるPR会社ってのがあるからだそうだ。PRってのは商品の宣伝だけじゃなくって、国民をマインドコントロールすると言った事もやる。

少し前だがエジプトでの話。エジプトはアラブの国だからイスラエル、つまりユダヤ嫌いな国民感情がある。このエジプトで売れに売れていたポケモンが突然ばったりと売れなくなった。

何故かというと、ポケモンはユダヤ人の会社が作っていて、アラブの神のアラーを冒涜する物であると言う、摩訶不思議な噂が拡がったのだ。そんな不謹慎なものでは遊んではいけませんというプリントが、学校から配られたと言うから恐れ入る。(笑声)

このポケモン排斥運動で、ポケモンはお店からもテレビからも忽ち姿を消した。これは、それが日本の物であるにも関わらず、あたかもユダヤの物であるようにデマを流したからだ。

犯人は勿論のこと、ポケモンのライバルの会社と、上手にデマを流してあたかも本当のように見せかける技術のあるPR会社。場合によっちゃあ、日本からの輸入を減らそうとしたエジプトの政府も、一枚、噛んでるかも知れない。

 

 次のオリンピックが北京に決まったのも、中国がいくつものPR会社を使って運動したからだそうだ。

PR会社はつまり弁護士と同じで、依頼人に都合がよければ、ウソも本当のように言う。

ヒロシマとナガサキに投下した原爆は、これ以上の日本軍の無駄な抵抗を断念させ、大勢のアメリカ軍や日本軍の兵士と日本人の生命を救った。原爆万歳、エノラゲイ号万歳、強いアメリカ万歳なんて百回も千回も聞かされりゃ、本気にしちゃうよナ。

 

 次回のオリンピックは絶対に北京で開催するべきだ。東西冷戦の終結も更に加速されるだろうし、現在、最大の懸案であるアフガニスタンの隣国でもあるし、これによって中国の環境問題が解決するし・・・・・とにかく、PR会社の者はありとあらゆる手段を使って、政府やニュース屋達に働きかけ、本当でも都合の悪い物は消し、嘘っぱちでも都合のいい物は、大々的に宣伝するようにした。

まあ、うまく買収するんだから、お金は掛かるだろうが、中国はもしオリンピックを国内でやれれば、十分に資金を取り戻せると思ってるんだろうから、運動資金に不足はなかったんだろうね。

中国の一般民衆の賃金は日本の何十分の一と言われてるのに、その国で高い給料の外国人PR会社員を雇って大運動したんだから、気の毒な気もする。

だけど、小泉首相の米百俵の話と同じダナ。今、大損しても、十年百年の長いスパンで見たら大儲けと思ってるのだろうが、そう問屋が卸してくれるかね。

 

 ま、こんな風に、陰にどんなPR会社があるか知らないが、「テロ」イコール「悪」とブッシュ大統領は旨いこと、論理のすり替えをやった。

でも、歴史上あったテロはそう簡単に割り切れない。有名なのはフランスがドイツに占領されてる時のレジスタンスで、ドイツ軍の電話線を切るなんて物から始まって、爆弾を仕掛けたり、軍用列車をひっくり返したり、捕まりゃ勿論のこと、死刑。

次から次へと出る犠牲者の屍の上を乗り越えてテロを続ける。ドイツに取っちゃテロリストで重犯罪人だが、フランスに取っちゃ命を捨てて国のために尽くした勇者。

伊藤博文を暗殺した安重根も、日本からすりゃテロリストの悪漢で、朝鮮からすりゃ愛国の志士。この伊藤博文だって、明治維新の前は、徳川幕府に対してテロで戦っていた。

北朝鮮の親分になってる金正日の親爺の金日成は、日本が朝鮮を統治してた時は、テロリストで、それが今は建国の英雄だ。

 

 まあ、テロって言うのは、力の差が歴然としてるときは、いつまでも泣き寝入りは出来ない、命を賭けて仕返しをしてやろうというので、仕方ないような時もある。

日本人の一番好きな物語がそうだな。そうだ。忠臣蔵だ。

頃は元禄十五年、江戸文化の爛熟期、市井にたむろする不逞の浪人が、何十人も結束して、夜分、幕府の高官の屋敷を襲撃して、主人を惨殺してしまうと言う乱暴な話。

でもこの後、全員が逃げも隠れもせず自首。

さてここで困ったのは幕府。一般民衆は、よくやったぞと赤穂浪士びいきだが、吉良上野の親戚縁者は幕府の中に多くいて、これを許したら徳川幕府どうなるか分からんぞと言った感じだったのだろう。

この時の将軍が犬公方として悪名の高い綱吉だ。生類憐れみの令なんて下らないことを強制したバカ殿で、本によっちゃ名君なんて書いてあるのもあるが、たまたまバブル景気がぶつかっただけなのだろうよ。元禄文化なんてのはナ。

この綱吉が、花は散るからこそ惜しまれる、ナンチャッテ、全員に切腹を命じたが、そんなに考えた訳じゃなくって、回りの連中の力関係で決めたのだろう。

所がこの事が庶民の同情を買い、忠義を貫いて望みを果たし、後は潔く責任をとって自決すると言った事が、これこそ武士の道、葉隠れは死ぬことと見つけたりとバカ受けしてしまい、テロ大大大大大の大賛美になってしまった。(笑声)

それから日本人は忠臣蔵大好き、歌舞伎が不景気で入りが悪くなると、忠臣蔵をやりゃ持ち直すと言われた。(笑声)

 

 日米戦の大分前、まだ日本とアメリカとの間が平和だった頃、歌舞伎がアメリカに行って興行したが、勿論のこと、演題はこの忠臣蔵。

そこでアメリカ人は、日本というとフジヤマやミカド位しか知らなかったが、新しく「サムライ」「ゲイシャ」「ハラキリ」なんて日本語を知ったらしい。それからこの言葉は、国際語に迄なった。(笑声)

 

<脱線千一夜 第108話>


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