ラッキー・ストライク

 

 禁煙運動が盛んになってきて、みんなのお父さんやお兄さんにも、タバコをやめた人が多いと思うけど、ラッキーストライクって言うアメリカタバコがある。

そうだ、赤い丸が書いてある奴だ。

知ってる者手上げて。たいていの者知ってんな。

所で、このタバコについて面白い話を聞いたことがある。

赤い丸はつまり日の丸、日本の国旗だ。そうしてそれに黒い輪ッカが巻いてある。

黒い輪ッカってなんだよ。エ? シャーロック・ホームズの話の中にそんなのがあったって?

バカだな。ありゃ「赤い輪」だよ。赤と黒じゃ大違い。(笑声)

じゃあ、黒い輪ッカってのはなんだろうね。

え? そうだな。お葬式だ。

日の丸の回りに黒い輪ッカだから、つまりは、戦争に負けた日本のお葬式。(笑声)

だからラッキー・ストライクってのは「アメリカは日本に勝ったぞ万々歳」って事だって聞かされた。

誰から聞いたかってーと、高校の時に生物のK先生というのが、雑学博士で有名だったが、その先生から聞かされた。

日米戦が終わって何年かしてからで、へー、そんなもんだろうな、なんて思った。肝心の生物の勉強の方は、殆ど覚えてないけど。(笑声)

 

 所が、これが大間違いのコンコンチキ。(笑声)

ラッキー・ストライクと言うタバコは全然古いんだな。昔からあるんだ。

戦争する前から日本の葬式だなんて言ったんじゃおかしいな。(笑声)

いつ頃かというと、西部の開拓時代だそうだ。

 

 話がそれるかも知れないが、昔、世界の各国の中で金を一番産出したのは、我が国、日本だ。

黄金花咲くと歌われた東北地方。それから、佐渡の金山。

佐渡の金山は一時期、世界中の金の産出量の半分以上を掘り出していたという。

だから、マルコポーロの東方見聞録なんかに、日本は金の国なんて書かれたり、元のクビライが日本を襲撃した時なんかにゃ、九州の太宰府の、わざわざ海岸に防壁を築いてある所を攻撃したりした。

頑丈に護ってるからには、ここに沢山の金が隠されてるんだろうなんて思ってたんだろう。(笑声)

船だから機動性があり、上陸し易いところを探して攻めて来たら、いくら鎌倉武士でもイチコロだったかも知れないがな。

てな塩梅で、かつては日本が金の国だったが、もう取り尽くされて今じゃお終いだ。

 

 所がアメリカじゃ、西部の開拓時代に、金が見つかった。

そればかりか、寒くて役立たずのツンドラ地帯であるアラスカを、二束三文でロシヤから買ったら、ここからも金が見つかった。

ホーレイケ。うまく金が見つかったら、大金持ちになれるぞっていった塩梅で、金鉱探しがワッと押し寄せた。

この時にタバコ屋がうまい名前のタバコを売り出した。

曰く「大当たり」。「大当たり」とは、金鉱探しに取っちゃ、何ともゲンがいい。

この「大当たり」というタバコがその名の通り「大当たり」。(笑声) てなわけで、もう分かったな。それが「ラッキー・ストライク」なんだそうだ。

 

 こういった事は知らないで、今度は自分が先生になってから「ラッキー・ストライク」は「日本のお葬式」だなんて話をしてやると、勉強のことはとにかく、こんなこた、よく覚えてる奴がいる。

そうして、卒業の時の寄せ書きに、大人になってタバコを吸っても、ラッキー・ストライクだけは吸いませんなんて書いた奴もいた。(笑声)

 

<脱線千一夜 第115話> 


前へ戻る
メニュー
次へ進む