スフィンクスの謎と鼻

 

 昔、人面獣身の怪物がいて、旅人をつかまえて謎々を出したという話がある。

そうだな。スフィンクスだな。

どんな謎かというと生まれたばかりは4本足、それが2本足になって、最後には3本足になる物は何かって聞くんだ。そして答えられない人間を食ってしまう。

その点は、まるでギャオスのようにとんでもない害獣だな。

え? ギャオス? ギャオス知ってる者いるか? そうだな。コーモリ怪獣だ。(笑声)

口から吐く300万サイクルの超音波メスで、片っ端から切り裂いてしまうと言う、切り裂きジャックの怪獣版だ。(笑声)

「大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス」なんて映画がある。(笑声)

 

 所でギャオスならぬこのスフィンクス、滅多やたらに殺人をするんじゃなくて、謎々に答えられないと、その人間を食ってしまうと言う点、ちゃんとルールに乗っとって行動している。

その時の気分で、弱い者イジメをしたり、オヤジ狩りなんかやってる、脳味噌の足りないガキ共より、ずっと知性的だ。(笑声)

 

 さてある日のこと、向こうからやって来た旅人を捕まえてスフィンクスは謎々を出した。

「おい、生まれたばかりは4本足、それが2本足になって、最後には3本足になる物は何だ? 蛙は始め0本、それが2本になり最後は4本。蝶々は幼虫の時は14本、それが成虫になると6本。所が、摩訶不思議と言うべきか、始めは4本、次は2本、そして最後は3本と言う物がある。分からねえだろう。お前のその間抜け面じゃあ、分かりっこあるメエ。(笑声)さあ、ぐずぐずしてねえで諦めて、俺の餌になって、腹の中に収まりゃがれえ。」

と旅人を一飲みにしようとした時に、旅人は

「あいや、待たれい、スフィンクスのオッサン。(笑声) その答ってのは、俺達のような人間だ。産まれた時は四つん這い、それから2本足で歩き、年を取ると杖をつくから3本足になる。どうだ。参ったか。じゃ、今度は俺が謎を出す番だ。当たらなかったら命は無いぞ。(笑声) 『うまのきつ りょうきつにのおか なかくぼれいり ぐれんどう』ってのがその問題だ。難しくてわからねえだろう。さあ、キリキリと目を回して、降参してしまえ」(笑声)

これにはスフィンクス、訳が分からなくなって、眼玉を白黒させてひっくり返ってしまった。と言うのはウソ。(笑声)

 

 とにかく答えが人間であることを当てられただけで、魔法が解けたのか、それとも反対に魔法がかかったのか、スフィンクスは石になってしまった。

それから何千年の間、体は砂漠の砂の中に埋まってしまって、頭だけが地上に出ていたらしい。

そうして鼻が変な形に欠けてしまっているのは、殆どの者は知ってるだろう。

あの鼻が何故欠けてしまったのか、昔に読んだ本の中には、イギリス軍の砲兵隊が射撃の練習をするのに使って壊してしまったなんてあった。

大砲の弾丸が当たったら、あんな傷どころか、頭が丸ごと吹っ飛んじゃうと思うが、昔の大砲は丸い鉄のボールを飛ばして、敵の門や城壁を壊すと言ったもので、爆発はしない。

とするならば、ありそうな気もする。

 

 別の話じゃ土地の人が尊敬の対象にして、このスフィンクスの頭を拝んでいたのだが、征服者のキリスト教信者かイスラム教信者かが怒って、大きいハンマーで壊してしまったとの事だ。

福沢諭吉が子供の頃、お札に小便をかけたのと同じだな。(笑声)

 

<脱線千一夜 第123話>


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