地震と虹

 

 せんだって、遺跡の中に自分の作った偽物を埋めておいて、しらばっくれて掘り出し、大発見だと言って、考古学者達を騙していたのがバレテ、大騒ぎになったな。

歴史の教科書まで直さなくちゃならないって騒ぎだ。

 

 大分前の事だが、これはどこかの外国でのことだ。

学生達が面白がって偽物の土器だかなんかを作って埋めて置くなんて、いたずらをやった。

考古学の先生がそれを発見して、こりゃ凄い。大発見だ。これをよく調べて学会に発表すりゃ、博士号を絶対に取れる。博士になりゃ月給はガクンと上がるぞ。(笑声)

なーんて喜んでコロコンデよく調べたら、何万年も前の土器に、その先生の名前が彫ってあった。(笑声)

え? その学生共、便所掃除させられたかって?(笑声)

さあ、どうなったか知らんが、神聖な学問に対する冒涜行為と言う訳だから、下手すりゃ、退学処分食らうだろうな。

 

 このような事の中で、こりゃ日本の事なんだけれどな。地震の前に虹が出るなんて事を、ある素人地震学者が言いだした。

地震と虹じゃ全然関係ないようだが、本人は、確かに地震の前には変わった虹が出ると主張する。そこで、確か京都大学かの地震学の教授が、そのような虹が出たら知らせてくれと、その男に頼んだ。

そうすると、○○で地震が起きたとすると、○○の方に虹が出ていたと言うハガキが来る。××で地震が起きたとすると、××の方に虹が出ていたと言うハガキが来る。実によく当たるんだ。

所で、一番問題なのは、ハガキの日付だな。地震が起きたのを知ってから、虹を見たなんて言うんじゃ駄目だ。地震が起きる前に虹を見なけりゃな。

例えば、5日の午後に○○で地震があったとしよう。そうすると、この素人地震学者は5日の午前に虹を見てるんだ。ハガキのスタンプが5日の午前になってる。つまり

5日の午前 虹を見たというハガキが、投函される。

5日の午後 実際に地震が起きる。

6日の午後 大学にそのハガキが着く。

 大学の教授はあまりにもよく当たるのでビックリした。

こんなによく分かるんなら、ハガキじゃなくて電話で知らせてくれ、そうすれば地震警報を出せるからってな。

でも、とうとう電話は来なかった。来たのはハガキだけ。虹で地震予知が出来るなんて変だが、このカラクリを誰か見破れるかな。

え? その話は前に本で読んで知ってる?(笑声)

そうか。知ってた者は手を上げて御覧。お前一人か。ちょっと黙ってろよ。教えんなよ。通信簿の点上げてやる訳にゃいかねえけどさ。(笑声)

え? そいつの家から大学までの距離はどの位だって? いいところに気が付いたな。あんまり遠くはなかったらしいよ。電車で2〜3時間じゃないかな。

え? 自分宛の手紙出して、中に虹を見たという事を書いて、大至急で届ける。正解だ。(拍手)つまり

 

5日の午前 自分発、自分宛の白紙のハガキを出す。

5日の午後 ○○で地震が起きる。

6日の午前 @自分宛のハガキを受け取る。

      Aそれに、5日の午前に○○の方に虹を見たと書く。

      B宛名を大学に書き直す

      C急いで大学に行き、郵便受けに入れる。

6日の午後 大学で地震学の教授が、それを読んでたまげる。(笑声)

 

 なんのこたない、たかがしれたペテンだよな。

え? いつ地震があるか分からないから、毎日、自分宛のハガキ出してたのかって。まあ、そうだろうな。

インチキ考古学者にしてもそうだが、そんな事やってて、何が嬉しいのか分からないけどな。全然儲かる訳じゃないし。ばれたら社会的信用を一気に無くしちゃう。

 

 ま、この場合、家と大学との距離が問題だよな。

すぐ隣りなんかだと、ドレドレ、どこに虹が見えるんだなんて教授がやってくるし。(笑声)

北海道と九州なんて遠くじゃ、これも又駄目だ。(笑声)

 

<脱線千一夜 第131話>


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