大統領と徴兵逃れ

 

 ソロモン群島沖でアメリカの魚雷艇PT106と日本の駆逐艦「天霧」との衝突と言うと、戦史マニヤの者は当然知ってるな。

そうだ。ケネディ大統領だな。

時は1943年の8月2日の暗夜、作戦行動中の日米の軍艦が、真っ暗な海上で突然出くわした。「暗闇から牛」なんて言葉があるが、牛じゃなくって軍艦、「暗闇から軍艦」だ。

それから大きさが違う。魚雷艇と駆逐艦で、言うなりゃ、子供と大人だ。

あんまり近いんで大砲ぶっぱなす暇なんてありゃしない。

「天霧」の花見艦長は「かまわねえから、ぶつけろ」と、言ったか言わなかったかは、あいまいらしいが、とにかく、一瞬の間に駆逐艦「天霧」は、魚雷艇PT106の横腹に轟然と体当たりして、それを二つに折ってしまった。

そうして、さっさと逃げて来ちゃった。(笑声)

 

 つまり「当て逃げ」って奴だが、戦争中なんだから、もたもたしてるとその辺に仲間のアメリカの魚雷艇が沢山居て「仲間の敵、ござんなれ」と一斉に懸かってくるかも知れない。

だから「天霧」は急いで逃げて来ちゃったんだが、二つに折られて沈められてしまった魚雷艇の方じゃ、酷いことになったな。

とにかく、生き残りの者がケネディ艇長の指揮のもとに、アメリカ軍が占領してる島の方まで、泳いでいった。

これがなんと1時間や2時間じゃない。

近くの島は日本軍が占領してるから駄目、なんとかアメリカ軍が占領してる島まで、10時間以上も泳いで助かったという話がある。

知ってたもの、手上げて御覧。何人か居るな。有名な話で映画にもなった。

 

 マ、特に褒める気じゃないが、ケネディは戦争中に大勢の部下を率いて、鮫が群がる危険な海を乗り切った経験などが有る。

だから、第三次世界大戦になると言う瀬戸際、原水爆のぶつけ合いになるかも知れないと言う時、思い切った外交戦略でそれを乗り越えられたんじゃないかと思う。

そうだな。キューバ危機だ。

 

 所が、同じ大統領でもクリントンとかブッシュになると、大分違う。

彼等の若いときは、ベトナム戦争でアメリカは泥沼にはまったようになっていた。ならば、祖国の危機を救う為にヘリコプターの機長にでもなって、大暴れしていたかというと、これが全然違う。

女の問題がばれて恥かいたクリントンは、この時はさっさとイギリスに留学してしまい、徴兵逃れしてしまう。

「強いアメリカ」なんて威張りくさってるブッシュは、テキサス州軍に入っていたらしい。先生はよく知らないけど、このテキサス州軍てえのは、警察みたいなもんなんだろう。ベトナムに行ったのは連邦軍(U.S.Army)だから、これもていのいい徴兵逃れだ。

 

 全くこの連中と来たら、戦場での英雄のケネディに比べて何と出鱈目なヤツバラで、愛国心なんか、これっぽっちもありゃしないと思うよ。

勿論のこと、愛国心が更に止揚された人類愛なんてのは、あるはず無くて、あるのはエッチっぽい性愛ぐらいだろう。(笑声)

 

 尤も、命有っての、モノダネだ。そのくらいの方が、ケネディみたいに、反対派に暗殺される気遣いなくていいか。

え? 女に殺されるかも知れない?(笑声)

成る程な。コチトラみたいに、あんまりもてない人間にゃ、そこまで知恵が回らなかったよ。(笑声)

 

<脱線千一夜 第145話>
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