天翔けるニセ札

 

 アメリカのB29は日本に爆弾や焼夷弾、はては原子爆弾を落として日本をメチャメチャにしたが、紙の爆弾というのも落とした。

何だろう。紙の爆弾って? 

そうだな。今誰か言ったように宣伝ビラだ。イラクでアメリカの飛行機が撒いていった宣伝ビラを燃してる写真なんか、新聞に出てたな。

宣伝ビラにもいろいろあって「マリアナ通信」なんて小さな新聞のようなのもあったし、中にはお札があった。当時の10円札だ。それを飛行機から撒いていくんだ。

アメリカは金持ちだぞ。貧乏な日本人共に恵んでやる。(笑声) 降参しろ。降参したらもっとくれてやんぞ。(笑声) てのとは少し違う。

なぜならそのお札は、印刷してあるのは表だけで、裏は真っ白だ。(笑声)

いや、真っ白じゃない、日本人に対してメッセージが書いてある。どんな事かって言うと

「このお札で以前はお米だったら○○買えた。でも、日本の軍人が始めた戦争で、その半分どころか四分の一も買えなくなってしまった。悪いのは軍人だから、軍人の言うことを聞かないで、戦争は止めよう」

てな事が印刷されている。

アメリカの言うこと聞いて戦争止めたら、今度は凄いインフレで、四分の一どころか四十分の一も買えなくなってしまった。(笑声)

 

 アメリカの飛行機が撒いたこのお札は、表は本物そっくりだが裏が違うから、しらばっくれて使うわけにゃいかない。

所が裏も表も印刷されてるお札が飛んできたことがある。

日米戦に日本が負けた年の翌年だと思ったが、造幣局の自動車がお札を入れていた箱を落としてしまったらしい。落ちた時に箱が壊れて中からお札が飛びだし、何百枚もの百円札が折からの風にあおられて、宙に舞っていった。壮観だったらしいね。

野球の外野フライを捕るときみたいに、二人が取ろうとして一緒に跳び上がって、ぶつかってひっくり返ったり、(笑声) 夢中で追いかけてドブに落ちたり、(笑声) 他人の家の庭に落ちたんで、垣根を乗り越そうとして、泥棒と間違えられたり、(笑声) 係の人は一生懸命に集めたが、ほんの僅かしか回収できなかったらしい。

ところで、このお札はまだ完全じゃなかった。どのお札にも付いているが、番号が印刷されていないんだ。

裏が印刷して無けりゃすぐ分かるけど、この番号が入ってないってのは、何だか変だなと思ってもすぐに気が付かない。そのまま流通しちゃったみたいだ。

 

 裏が印刷してない10円札ってのは友達が拾って持ってたんで見たことがある。表は本物と同じだ。

番号の印刷してないヤツはと言うと、学校から帰る途中ドブの中に浮いてるのを二枚拾った。よく洗ってアイロンかけてからヤキイモ買って食べたってのはウソ。(笑声)

番号の入ってないことを見つけられ、ニセ札使いって追いかけられたってのもウソ。(笑声)

ヤキイモなんか買って食べないで、しまっておけば、番号の印刷してないお札なんてのは、珍品として骨董屋で高い値段がついたのに残念!(笑声)

てな事考えたって、拾ってなけりゃ、どうしょうもないな。(笑声)

 

<脱線千一夜 第149話>


前へ戻る
メニュー
次へ進む