ピカソとピカドン

 

 ピカソって絵描きの名は知ってるな。

シュールリアリズムって言って何やら訳が分からない、お化けみたいな絵を書いたが、それが素晴らしい上手い絵だって言うんだから、素人にゃさっぱり分からないがナ。

 

 でも、このピカソって小父さんは、(笑声) 絵はとにかくとして、神様みたいに先見性がある大天才なのには、先生はほとほと感じ入った。

なにしろ、何年も前に原子バクダンによるヒロシマ・ナガサキの大虐殺を予言したんだからナ。

何? 先生の言ってること、訳が分からないって?

ホラ、あのピカソが描いた有名な原爆の図があるじゃないか。

上の方で裸電球みたいに光ってるのが原爆だ。その下で大勢の人間や馬などが苦しんでる。

左端の方に牛がいて、ザマアミヤガレ、これからは俺サマの天下だなんて、でけえツラしてるが、あれがアメリカだ。(笑声)

 

 何だって? ありゃヒロシマ・ナガサキじゃなくってゲルニカだって?(笑声)

いやいや、ありゃヒロシマ・ナガサキって絵なんだ。

ピカソはとても頭がいいから、スペインの小さい街のゲルニカを、少しばかりのドイツの飛行機が空襲したことから、やがて科学が人間に対して恐ろしい牙を剥く、ヒロシマ・ナガサキの大虐殺を予見したんだな。みんな知らなかったんか。(笑声)

え? 美術の教科書にも「ゲルニカ」って出てるって?

何だ。教科書検定の役人共も知らなかったんか。

こんど文部科学省に行って、よく教育してやろう。(笑声)

 

 原爆ってのは「ピカッ!」と閃いて「ドーン」と爆風が来る。

だから「ピカドン」と言われた事は知ってんナ。

やはり「ピカソ」だけあって「ピカドン」には詳しかったってもんか。(笑声)

 

<脱線千一夜 第158話>


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