みりん爆発
家の近所の小母さんが、なんて言うと
♪チャキチャキ江戸っ子 お祭り騒ぎが大好きで♪(笑声)
なんて続きそうな気がするが、歌とは関係ない。
その小母さん、お勝手でテンプラを揚げていた時のことだ。
え? そうだ。その通りに火事なんだ。
でも普通テンプラ火事って言うと電話が来たり、玄関にお客が来たり、そんな事でついうっかりし、揚げ物の途中だった事を忘れて、油が過熱し引火して大事に至るってのが相場だが、この場合は違う。電話も来ないしお客も来ない。
ただ、揚げ物の途中で油が足りなくなっちゃったんだ。だから油を追加しようとした訳だが、それが油じゃなかった。
ビンが似てるからって訳で油と間違えちゃった。
何? しょうゆ?(笑声)
色が違うから間違える訳ないよ。
酢(す)? 似てるけど酢じゃない。
何? 水?(笑声)ビンに水入れて、台所にしまって置く家なんてないだろうがな。
え? ウオッカ?(笑声) 成程、こないだバーだかキャバレーだかで、タバコの火が服にこぼれたウオッカに引火して騒ぎになったなんて、新聞に出てたな。でも違う。
そもそもウオッカなんてそんなハイカラな物、その辺の小母さんの家にある訳ないよ。(笑声)
ほかには? そうだ。みりんだ。
近頃はスーパーやコンビニで出来合いの惣菜を買ってくる家が多いから、みりんはあんまり使わなくて馴染みがないかも知れないが、みりんてえのは料理用の甘いお酒だ。
このみりんを油と間違えちゃった。
さあ、どうなったかと言うと、ウオッカみたいに殆どがアルコールと言うのとは違い、みりんのアルコール分は20パーセント位だろうから大爆発はしないで小爆発位で済んだ。(笑声)
アメリカがイラクで使った気化爆弾はテレビで見たがあれと同じ。空気に混じったアルコールの蒸気に引火して爆発したが、ほんの少しだったし、アルコールの度数が低かったからよかった。
小母さんはびっくりしたが幸いに火傷も怪我もしなかったし、鍋やコンロも無事だった。
酒はアルコール分が入ってるから、取扱いには気を付けなけりゃいけないな。
ウオッカに限らずウイスキーやブランデー、コニャックなんか相当アルコールを含んでるのがある。
所で、漢字で書くと「みりん」は「味醂」、「しょうゆ」は「醤油」だ。
これらは一応ながら字と発音が合ってるが、「ビール」は漢字でどう書くんだ。
そうだな。「麦酒」だ。原料に麦を使うから当て字で麦の酒って書くんだろう。
じゃ、ウオッカは漢字でどう書いたらいいんだろう。
え? 原料? やっぱり麦じゃないかな。でもこの場合は関係ない。
知らないか。ウオッカは漢字で書くと「火酒」だ。スゴイダロウ。(笑声)
アルコール分が90パーセントもあるんだから、それをいい加減に扱えば火傷するのも仕方ない。
慌てて薬を塗ゃあ「火酒」に薬が入って「火薬酒」になってこれまた大変だ。(笑声)
<脱線千一夜 第159話>
前へ戻る メニュー 次へ進む