オレオレ詐欺
こないだ聞いた話だが、先生の知り合いの小母さんの所に、夜中に突然に息子さんから電話が掛かってきた。
こんな夜中に一体どうしたんだろうと思って聞くと、近頃、奥さんとうまく行ってない、困っちゃったと半ベソでぼそぼそと話す。
本人は弱り切ってしまっていつもの元気な声と違って、すっかりと憔悴しきったような様子である。
何とか元気を付けてやろうとして、あんた男でしょう、頑張ったら、なんて言ってやっても、もう仕事なんか手に付かない感じと言う話。
でもその時に、ベットで電話してたから、ちょっと手が滑って電話機を落としてしまったらしい。
慌てて拾って聞いてみると、どっかにスイッチがぶつかってしまったらしく、ツーーツーーと言う音に変わってしまっている。
切れちゃったなら、又掛かってくるかと待ってたけれど、掛かってこない。そこで思い切って、息子さんのマンションに電話をしてみたというわけだ。
何回か何十回かの呼び出し音の後に電話口に出たのは、息子さんの奥さんだ。
そこで恐る恐る息子さんのことを聞くと、さっきからずーっと寝てるとの事だ。ばっかばっかしい、心配してたのに。(笑声)
次の日に息子さんは奥さんと、仲睦まじくやって来て(笑声) 夢見るにことかいて、下らねえ夢見てらあなんて、小母さん、大笑いされたらしい。(笑声)
でもこりゃ夢じゃなく、側に寝ていたお家の人も、電話してる声で起きて、一体どうしたんだろうと思ったそうだ。つまり、証人がいる。(笑声)
オレオレ詐欺ってのは、暴力団と交通事故やって、大金を払わないとどんな眼に遭わされるか判らないって、心配した親から金を騙し取ったりするんだが、この話はどうも金になりそうな物じゃないようだ。
奥さんに払う手切れ金を騙し取ろうなんて言っても、暴力団との交通事故のような緊急性のある物じゃない。私が中に入って話を付けてやろうなんて、言われちゃうもんな。
先生の考えじゃ、恐らくその息子さんの悪友が、面白がってやったんじゃないかなと思う。アイツ、綺麗なカミサン貰っていい気になってやがるなんて、ヤキモチ半分でな。(笑声)
息子さんは、あんな夜中に人の家に電話しちゃ迷惑だぞうなんて、小母さんに文句言ったらしい。
自分は起きるどころか、高鼾(たかいびき)で、ぐーぐー寝てたのにな。(笑声)
起こされたのは奥さんだ。つまりは「愛妻家」だな。男の子達、もって範(はん)とすべきか。(笑声)
<脱線千一夜 第165話>
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