遠島、つまり島流し。法律の言葉じゃ流刑（るけい）って言うが、この流刑は、死刑の次に重い刑罰だったらしい。
今は死刑の次に重い刑、つまり「死、一等を減ず」と言ったら「無期懲役」詳しく言うと少し違うらしいが「終身刑」で死ぬまで牢獄から出られないと言う奴だ。
でも、昔は牢獄なんて物はない。一般人だって家を持つのは大変なのに、罪人達に家を造るなんて大変だ。
それもチャチなもんじゃ、ぶち壊されて脱走されちゃう。だから牢獄の替わりに遠い島に追い払ってしまう。
とにかく、牢獄なんか造りゃ、罪人の番をする看守を雇わなきゃならないし、飯も毎日食わさなきゃいかん。（笑声）
そんなに金かけるわけにゃいかないから、島流しにすると言う訳なんだろう。家も食い物も自分で考えろって訳だ。
それから、いろんなしがらみがあって、死刑にしたいけれど出来ないと言うのがある。
だから、遠島と言うことにして、都から連れ出し、殺してしまうと言う実質的には死刑と言うのもあったらしい。
つまり、着くまでは何時殺されるかも知れないと言うビクビクもんだったろうし、着いて釈放されても、衣食住、何にもない。その日から乞食。
いろんなアルバイトの口がありゃいいだろうが、どうせ流刑地なんてのは、原住民がやっと食っていくだけの所だ。家もなく食い物もなく、殆どの者が飢え死に、凍え死にしたのだろうな。
所で、先生が子供の時から不思議でならなかった物に、かぐや姫の話がある。
なぜ不思議かって言うとな。竹の中から出て来た光り輝くお姫さまは、月の世界の人間なんだが、何か悪い事をした犯罪人で、罰として地球に島流しになったと言うそうだ。
でもここがおかしい。島流しなら、死刑と同じ位酷い目に遭う筈だ。
それなのに、親切な慈悲深い老人夫婦に拾われ、美しい娘に成長し、お爺さんが切る竹からは、絶えず金銀宝物が出て来る。
これはこの子を養っているからに違いないと、ますます姫を大切にしたなんて、こんな島流しなら、希望者殺到だろうな。（笑声）
この後、綺麗な女となると放っとかないのは、古今東西何処でも同じ真理だ。（笑声）
我こそはと思ってる自惚れ男共が一斉に押し掛けるが、誰にも靡かない。最後に何とか中納言だとかいう奴等が５人残った。
こいつら、良く言やあ「意志が強い」悪く言やあ「天下一の強情っぱり」（笑声）
俺こそ「かぐや」を物にしてやると一歩も引かない。さかりが付いた馬みてえだ。（笑声）
いろんな無理難題を出されて、大怪我したり、財産すっちゃったり、そこで最後にはミカド、つまり「天皇陛下」が出てくるって寸法だ。
みんなも知っての通り「天皇陛下」の言うことも聞かない。考え方によっちゃ大不忠者だ。戦争中の教科書に、良くこんな話が出てたもんだと思う。
お終いに、月からの迎えの者が持ってきた服を着たら、地球での思い出はさっとＤeleteされて、さっさと月に帰って行っちゃう。
馬鹿なのは地球人だ。「かぐや」一人のために大勢の者がキリキリ舞いさせられちゃったんだな。
先生が昔から不思議に思ってたのは「かぐや」が、何故地球に流刑になったのだろうかと言うことだが、これについちゃ先生と同様に不思議に思った者が大勢いて、インターネット見ると色々書いてある。
まず、「かぐや」の罪だが、殺人・傷害・詐欺とかいったろくでもないものじゃない。多分、政治犯か思想犯だろうとある。
昔のことだから、アカつまり共産主義革命派なんてもんじゃなくって、どろどろした権力争いだろう。
右大臣だった菅原道真だって太宰府に流刑を食らったんだからな。
多分「かぐや」は月の世界の○○王の王妃だったんだろう。
所が執権として権力を振るう××候が○○王を捕らえ、日本海の隠岐の島に流刑にしてしまった。（笑声）
え？ 太平記みたいだって。（笑声）
そうだな。いつ竹取物語が太平記に変わったんだろう。（笑声）
とにかくここでゴダイゴ王の王妃の「かぐや」は、地球に流刑になったが、ホウジョウ候の滅亡と、ゴダイゴ王の復権を期待するクスノキ候・ニッタ候・ナワ候達は、自分の発言権を確保する為に、せっせと「かぐや」のもとに鼻薬を送ったって塩梅だ。
やがて建武の新政がなって、「かぐや」は晴れて月の都に迎えられる。
所が、好事魔多し。アシカガ候の反乱によって再び月世界は混乱の極みとなり、「かぐや」は敵将に捕らえられ、鎌倉に送られ、若宮殿で踊りをさせれる。それが、
♪しずやしず しずのおだまきくりかえし むかしをいまに なすよしもがな♪
って奴だ。（笑声）
話によると、それから男装の麗人となって、フランス軍を率い、オルレアンでイギリス軍をメチャメチャにやっつけたそうだ。（笑声）
それからどうなったかって？ 後は、作って御覧。巧いのが出来たら、数学の成績を５に・・・・（一瞬静かになる）
するわけないけどな。（笑声）
＜脱線千一夜 第１７０話＞
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