アーラ可哀想
ヒューマニズムって言うとどんなもんか、みんな知ってるな。そうだな。人道主義だな。
人道主義とは書いて字の通り「人の道」って訳だ。
人の道って言っても車道に対する歩道の事じゃない。(笑声) 万物の霊長たる人間様が、一般の動物たちとは違う、人間だからこそ出来る物の考え方だ。
とすると、じゃ学校で習ってる国語、社会、数学なんかの勉強、みんな「人の道」か、なんて早合点する奴がいる。(笑声)
チンパンジーだって教えれば何百語の言葉を理解するらしい。みんな、英単語どのぐらい暗記してる?
チンパンジー以下の奴が大勢いるんじゃないかな。(笑声)
所で、このヒューマニズム、「人道主義」ならいいんだが、場合によると「人情主義」になってしまう。
つまり「アーラ可哀想主義」って奴だ。(笑声)
痩せてしまって骨と皮になった野良猫がいる。「アーラ可哀想、家においで。ご飯の残りくらいなら上げるから」なんて連れて帰る。
それが一匹が二匹になり、二匹が三匹になる。外出して家に帰ってきたら、玄関に籠に入れて仔猫が何匹もニャーニャー言っている。
「アーラ可哀想、誰でしょう。こんなに可愛いお前達を捨ててしまった、鬼のような心の人は。もう小母さんの所に来たら安心よ」
なーんて飼ってりゃ、暫くして、またまた籠に入れて仔猫が、何匹も玄関に捨てられてある。(笑声)
アソコの家に持ってけば飼ってくれるってわけで、仔猫が生まれて困ってる人が、夜中にそーっと捨てに来たんだ。
アーラ可哀想ってなもんで、またまた飼えば、やがて仔猫は親猫になり仔猫を生み、次から次へとネズミ算で増えていく。
始めはご飯の残りぐらいで済んだのが、やがては猫の食事代が家計を圧迫するようになり、近所からは嫌がられて、泥棒した訳じゃないのに「ネコババア」なんて言われ、アーラ可哀想なのはこの小母さんだ。(笑声)
自然には自然の掟(おきて)があり、それに対して迂闊(うかつ)に人間が手を出してはいけないんだな。
猿に対して可愛いからって餌をやったりすると、どんどん増えて人里にやって来て、観光客の弁当を取ったり、お店の物をかっぱらったりする。ドラネコならぬドラザルだ。(笑声)
何百万年、何千万年と自然界は続いていて、この自然界にマッチした物が生き残っていく。
以前に読んだ話だが、アラスカかカナダの北の方らしいが、草をウサギが食べ、ウサギをオオカミが食べるという食物連鎖がある。
まず、ウサギもオオカミもあまりいない所に、草がどんどんと増えていく。草が増えれば食物があるからウサギが増えていく。ウサギが増えれば食物があるからオオカミが増えていくという順だ。
もし、土地が無限にあって草が無限に増え続ければな。
所がウサギの未来に暗雲が立ちこめる。ネズミ算式に増え続けるウサギの食糧が不足し始めた。ウサギの増え方に草が間に合わない。
そればかりじゃない。以前はあまりいなかったオオカミが、増えたウサギを餌にして増え、群をなして狩りをするようになった。
こうなるとウサギは食い物は無し、命は狙われる。日米戦中の日本人みたいだな。(笑声)
まあ、そんなわけで、まず草がなくなる。草がなければ、草を食うウサギがいなくなる。ウサギがいなくなれば、ウサギを食うオオカミもいなくなるという順だ。
それからどうなる? そうだな。また始めから元通り。
(1)草が生えてくる。
(2)草を食うウサギが増える。
(3)ウサギを食うオオカミが増える。
(4)ウサギに食われて草が無くなる。
(5)食い物が無くなった上にオオカミに襲われてウサギが減る。
(6)ウサギが減れば食い物が無くなってオオカミは餓死する。
というのが一つのサイクルで、これを何年かおきに繰り返すらしい。
先生はそこを列車に乗って旅行した人の記録を読んだ。残念だが自分が行った訳じゃない。(笑声)
その人の話では、時期が丁度ウサギが草を食い尽くした頃らしく、列車が走れど走れど青い草はない。勿論のことウサギやオオカミもいない時だったらしい。
でも、草の種は高原中に散らかってるだろうし、ほんの僅かだろうが、飢えても病気にもならず、オオカミに追われても逃げおおせる健康なウサギや、同様になんとか生き残った頑健なオオカミがいて、生存競争に勝ち残って子孫を残していくのだろう。
日本はあまりこの良い例はないらしいが、中国の歴史を見ると面白い。これと同じらしいんだ。
ある王朝が中国を支配する。初めのうちは良いんだ。
所が食物生産の増加が人口の増加に追いつかない。食い物が無けりゃあ人の物を泥棒するしかない。強盗団が横行する。
その強盗団がいくつも連合して大きい勢力になり、互いに戦いあう。つまり内乱だ。当然ながら田畑は荒らされ、食物は更に減り、飢えて死んだり、兵隊に殺されたり、戦って死んだりして人口は激減する。
でも最後には一番強い強盗団が全体を征服して内戦は終わる。人口こそ少なくなったが土地は十分にある。国中に活気がみなぎってる時だ。放っといても政治はうまく行く。バカ殿でも名君なんて歴史書に書かれる。(笑声)
そのうちに人口が増え始末に負えなくなると、バカ殿でなくてもバカ殿で手が付けられないイロキチガイだなんて言われる。(笑声) 歴史書なんて次の権力者が都合の良いことを書くんだ。前の王様がこのように暗君だったから、我々が成敗して理想郷をうち立てたなんてな。もとはといえば強盗団の首魁のくせに。(笑声)
前置きばかり長くなっちゃったが、この間、イラクで日本の外務省の職員がテロ集団の攻撃にあって犠牲になった。その時にそのうちの一人が子供の時に書いた作文が紹介され、このように視野の広い子が外交官として活躍する機会を失って、志半ばで凶弾に倒れてしまったのは、嘆かわしいことだとあった。
どんなことかというと
「日本では米余りというので、水田は一部が休耕田として草ぼうぼうにしてあるが、この間見た中国のTVじゃ、働く田畑がなくて、故郷を捨てて荒れ地を探しに行く農民が映っていた。彼等が日本の休耕田を見たらどう思うだろうか。」
と言った内容だった。
日本の休耕田についちゃ日本の農政の失敗があるから、そりゃ別として、中国の農民の実体はどうだろうか。
かつて「中国の赤い星」と言われて、清朝のの滅亡以来、めちゃめちゃだった中国を統一した英雄「毛沢東」は人口爆発が国を危うくする事を知り、一人っ子政策を進めた。これは全く正しい。
でも農村じゃ子供を働き手と考えてる悪い風習がある。だから、なかなか徹底しない。人口が増えりゃ、田畑は足りなくなるのは当たり前だ。
今のところ、中央政府の力が強いから内乱にはならない。だけれども、放っておかないで、早く産児制限の教育をするべきだろう。
そうしないで、例の「アーラ可哀想、なんとかしてあげなけりゃ」なんて奴で、ODAなんてやつで援助をしてやりゃあ「ホレ悪者の帝国主義日本が謝って、こんだけ貢ぎ物を持ってきたぞ。半世紀以上も昔の、南京虐殺だとか従軍慰安婦とかで大騒ぎして、もっともっとたかれるたけタカレ、逆さまにしても鼻血が出ない位、しぼりとれ!」(笑声) てなことになる。
日本から取り上げた援助は、その日本を狙ってる核ロケットに化けたり、おあまりは「アジアの盟主の俺様の言うこと聞け。そうしないと酷い目に遭うぞ」なんて言って回りの国に呉れてやったりする。ジャイアンとスネオの合体だ。(笑声)
日本が国連で敵国条項なのは、中国にはとても都合良い。だから、殆どの国がこれの廃止に賛成してるのに、中国は「うん」と言わない。
中国は常任安保理事国だから、中国が賛成しないと通らない。
「アーラ可哀想」なんて考え方が日本人にあるから、回りの国にバカにされるんだな。
ノビタはイザの時にはドラエモンが助けてくれるが、アメリカだってドラエモンどころか、むしろジャイアンに近い。そもそも 「アーラ可哀想」なんて言う資格は日本人には無いんだ。
税金沢山取られて、狭い土地に閉じ込められてな。外国人は日本人のことを「アーラ可哀想」って思ってるだろう。(笑声)
所で、この毛沢東と言う男は初めは良かったが、だんだんと駄目になってきた。
年を食ってから変な命令ばかり出すようになった。周りの者が気が付けば良かったんだが、大中国を統一したって訳で半分神様のように尊敬されてたんだろう。
文化大革命とか大躍進運動とか、訳の解らないことを言いだして、その為に産業はめちゃめちゃになって、日中戦争よりも大勢の人民が飢え死にしたらしい。
毛さん、大分ボケてたんだな。(笑声) こんなのに政治を任せてたんだから、独裁制は恐ろしい。
その頃の中国人達はアルツハイマー大王に支配されてたんだ。(笑声)
<脱線千一夜 第177話>
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