占領軍の犯罪

 

 沖縄のアメリカ兵の婦女暴行事件は何のかんのとすったもんだしてるが、戦争や兵隊ってのは、始めっから気が狂ってるんだ。

古い資料を見たが、日米戦が終わって13年たち、講和条約もとっくに済んでいた時の1958年、アメリカ兵の日本に於ける一年間の犯罪は公式に記録されてた物だけでも9998件もあったそうだ。

沖縄の暴行事件は新聞に出ない物は、その10〜20倍だから、泣き寝入りも入れると膨大な数になってしまうことだろう。

 

 先生はずっと東京育ちだった。

そうして、アメリカ軍も世界中の新聞記者達が集まってる東京でバカやると、世界中の物笑いの種になるってわけで、わりかしとまともな兵隊を送ったらしいが、地方じゃ非道かったらしい。松本清張の小説にもあるがな。

尤もその東京でさえも、何十台という軍用トラックが、キーをチョコチョコといじりながら走っていく。どうなるか分かるかな。

キーを一瞬抜くと、プラグに火花が飛ばないから、シリンダーの中のガソリンを含んだ空気は、爆発しないで排気される。そうするとそれが、熱せられてるマフラー、つまり消音器の中で、爆発して排気口から鉄砲を撃ったように火が出る。バンバンバンバンバン てすごい音出してな。消音器じゃなくって爆音機だ。(笑声)

道を歩いてる日本人を脅かしてやろうってわけだ。

 

 でも、こんなのは音だけだから何の事はない。ひどいのは戦闘機で飛んで来て、空からいきなり機関銃を撃つ。茨城県で道を歩いてる母子に機関銃の一連射を浴びせ、子供は重傷、母親は体が半分に引き裂かれて即死という、悪辣な事やった奴が居た。

群馬県の相馬ヶ原じゃ、演習の後、金属製の薬莢が沢山落ちているんで、それを広いに行く近所の小母さん達がいる。

所が兵隊の中にジラードって言う悪辣な奴がいて、いや、悪辣って言うよか、頭の中身が薄い奴なんだろうが、薬莢探してる小母さんに「ママサン。ココココ。」なんて言って拾ってる所を、いきなり銃で撃ち殺してしまった。

西武池袋線の稲荷山公園はアメリカ軍のジョンソン基地だが、この飛行場は小さいが日本の空の交通整理をしていた。ここの管制官が、「木星号」と言う日航の旅客機に、何かほかのこと考えてたんだろう、高度を三分の一にして飛ぶように間違えて指示した為、大島の三原山に激突して全員死亡という、悲惨な事故があった。

勿論アメリカは知らぬ存ぜぬで、通信した録音テープだって見せやしなかったけどな。

 

 ま、そのジョンソン基地で、これも又頭の中身が薄いロングブリーって奴が、あろう事か、走ってる西武電車めがけて実弾をぶち込んだ。

ジョンソン基地の所、稲荷山公園の駅を電車で通った者、大勢居るだろう。

そうだ、1年の時の正丸峠の遠足の時には、行きも帰りも通ったんだな。アメリカの飛行機が居るなんて、面白がって見てた者もいたな。

そうか。思い出した者、何人もいるな。あそこでいきなりズドンだよ。気の毒に22歳の武蔵野音楽大の学生が殺されてしまった。

アメリカ軍が日本を占領してる時ならとにかく、講和条約が発効した後でもこんな事が頻繁に起こった。裁判やらないでアメリカに逃げちゃう奴もいれば、ようやく日本側が裁判に持ち込んでも、殺人事件なのに、懲役2年執行猶予4年なんて、意味ないのばかりだった。

もし日本人がアメリカ人を殺したら、死刑に間違いないな。

相馬ヶ原で薬莢拾いの小母さんを撃ち殺したジラードなんか、さっさとアメリカに帰っちゃった。同棲してた日本人の女を連れてさ。(笑声)

 

<脱線千一夜 第95話> 

 


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