対外援助と死の商人

 

 日本は対外援助といって、発展途上国や未開発国にせっせとお金を上げている。

アメリカが一番で日本は二番、イギリスもフランスもドイツもロシヤもみんなケチンボウで、日本は凄く気前がいい。

だけど、全然感謝されてない。お金出す位、当たり前だと思われてる。(笑声)

このお金は国民が払った税金なんだから、税金ふんだくられてる国民からすりゃあ堪ったもんじゃない。

でも、こんなにたくさんお金をくれてやっても、儲かるのがこれまた不可思議にも同じ日本である。

日本と言ってもこっちは日本の大会社だ。

日本政府は国民から集めた税金で大会社から品物を買う。その品物を外国にやるって訳だ。会社としちゃあどんどん物が売れる。

どうせ向こうはただで貰うんだから、少しは不良品が混じってたって構やしない。難しい機械なんかは、使えっこないんだから、かっこよければ中身は空っぽで十分だ。(笑声)

まさかそれ程でもないだろうが、お金は税金から貰うんだから、取りっぱぐれはない。

又、機械が売れれば後で修理の部品代などで儲かる。そうすると、対外援助もまんざら悪くない。

中には、人の善い市民団体なんか迄も調子に乗って、恵まれない国の子供達の為になんて募金運動なんかやってる。

然し、先生の考え方は、いささか危険思想かも知れないが、大反対だ。

イヤ、先生は正義感に満ち、人類愛に溢れたヒューマニストだから、あだおろそかに言ってる訳じゃない。

 

 そもそも人間の幸せとは何だろうか。一番簡単に分かるのは、神様に祈る時の言葉だ。

天下太平 五穀豊穣 家内安全 無病息災

戦争が起きず平和で、作物が豊作で、地震や雷や火事や泥棒に合わず、病気や怪我にならないようにして下さい。お願いします。神様仏様。

なんてずいぶん虫がいいお願いだ。僅か十円のお賽銭で。(笑声)

もし、人の善い神様がいて、イヤ、神様なら「人が善い」じゃあなくって「神が善い」って言うのかな。

まあとにかく、神様がそのお祈りを全部かなえてくれたとしよう。十円ポッチじゃあ駄目だなんて、ケチな事言わないで。(笑声)

神の恵みによって、このお祈りがかなえられれば地球は地上の楽園となる。

乳と蜜の流れる土地なんて言葉があるが、それ以上だ。

何十年かは天国だろう。その後が問題だ。

え、ボケ老人の介護。(笑声) 神様がついてるんだから、そう簡単にはボケない。(笑声)

老衰して死ぬのは、生き物の宿命だから仕方ないとする。どんな困った問題が起きるだろうかね。

そうだ。人口爆発だ。

今のようにあっちこっちでドンドンパチパチ戦争やっていて、食料は不足、悪い病気は蔓延しているっていうのに、人口はどんどんと増えている。

平和で食料があり、病気で若死しなけりゃ、今の何倍も増える。

たちまち、食料不足になり、シベリヤのツンドラ地帯から、エベレストのてっぺんまで畠にしなけりゃ追いつかない。

イヤ、それでも間に合わないから、人工衛星にも畠を作るか。(笑声)

 

 さて、今、ある国が食料危機で困っている。

飢えてガリガリになって、腹ばかり出っ張ってる子供の写真なんかが新聞に出てる。

断っとくけど、腹が出っ張ってるのは栄養失調だからだよ。

みんなみたいに食い意地が張ってて、腹一杯食ったからじゃあないんだよ。(笑声)

それを見て、アラー可哀想、出来るたけのことしてあげましょうなんて考えるのは、同じヒューマニズムでも愚かなヒューマニズム、その国の人口を調べりゃすぐに分かる。

ものすごい人口爆発なんだ。人口が増えりゃ食料が不足するのは当然だ。

人口が増えて食べ物が無くて可哀想だなんて食料を送ってやると、またまた人口が増える。

又、飢える子供がいるから、食料を送る。またまた人口が増える。

又、飢える子供がいるから、食料を送る。またまた人口が増える。

又、飢える子供がいるから、食料を送る。またまた (笑声) いくら援助したって、際限がない。

この事は、大分前にマルサスと言う学者が、人口論と言う本の中で予言した事だ。

人口が増えて飢える子供がいるから、食料を送るというのは、先生を以って言わせしめれば、神に対する挑戦だ。

天に届く巨大なバビルの塔を作ろうとして、神罰を受けた人間の愚かな考えだ。

大地震や天災で死体の山が出来て、その国の人が苦しんで、人口がどんどんと減ってしまうのは、こりゃあ勿論放っとく訳にはいかない。

だけど、人口が増えて食料がないから援助してくれなんてのは、真っ平御免こうむりたいな。

そういった国に援助するといったら、物資ではなくって文化だ。人口の抑制や教育の普及だ。

こういった事になら、税金をどんどん使っても結構だが、政治献金してくれる大会社が儲からないから、政治家達は、やりゃしない。

イヤ、今の日本の政治のシステムは、真に国民の事を考える、いわば田中正造のような人は外されて、政治献金ガッパガッパかき集める人間がのさばってるんだから、仕方がない。

 

 又、このような発展途上国や未開発国の中には、内乱が起きていて、畠は荒らされる、家は焼かれる、地雷は爆発するといった、気の毒な状態だが、その武器はどこから持って来たのだろうね。

自動小銃、機関銃、迫撃砲、地雷等はどこから手に入れたか。

そんな人殺しの道具を売って金儲けをしている国がたくさんある。

これは対外援助の全く反対だ。

つまり我々の税金で、日本がやっている事の、ぶち壊しをやってるんだ。

日本人なんて金持どころか、犬小屋みたいなちっぽけな家に住んで、けちな暮らしをしてるなんて笑ってる国があるが、彼等が楽に生活しているのは、今迄さんざん植民地の人達をこき使い、今はジャンジャンと武器を輸出して儲けているからだ。

かつての植民地の搾取は物凄く、インドはイギリスに占領されてから、収入は八分の一になった、つまり月給の八分の七はイギリスに取られてしまった。

ようやく独立したのはいいとして、今度は武器をじゃんじゃんと売りつけられる。

それから、その武器の中で困っちゃうのは地雷だ。

昔は対戦車地雷なんて戦車のキャタピラぼっかすような大袈裟な物が主流だったらしいが、今は小さな対人地雷が主だ。

なぜ小さいかと言うと、ドカンと破裂した時に人間を殺さないようにする。

ちょっと考えると、人道的のような感じだがドッコイそうじゃない。

敵兵を殺したら、敵は死体をそのままにして攻めてくる。

つまりマイナス1だ。然し、殺さないで怪我にすれば、怪我人と介抱する人と二人残さなけりゃならない。

これはマイナス2で効果が倍になる。

その上に小さけりゃあ安いって訳で、敵味方入り乱れてこれをうんとこさ撒いて、関係のない一般の民衆が、毎日のように大怪我をさせられている。

だから国連軍の仕事っていうのは、こういった武器を運んで行く死の商人達の船を撃沈したり、トラックを爆撃したりする事じゃあないかな。(笑声)

そんな映画もあったよ。

ある原子力潜水艦の艦長が仲間の乗組員と組んで、死の商人達の船を片っ端から沈めちゃうといった乱暴な話だがね。

でも、本来はこれが正しいんだ。国によちゃあ図々しく、武器の輸出による儲けを、国家予算に予め計上してあるっていうが、こんなに馬鹿な話はない。

又、片方じゃ、国連かどこかから、緊急食料輸入のお金貰っといて、そのお金で武器を買ったりするようなけしくりからん国もあるそうだ。

参考書買うからって言って、お母さんからお金貰ってマンガ本買っちゃうようなもんだ。

マンガ本ならまだまし、気に入らねえ奴がいるからやっつけちゃおうと、バタフライナイフ買うようなもんだナ。(笑声)

 

<脱線千一夜 第51話> 


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