グリーンランド

 

 「緑なる大地」(大きく板書)なんていうと、とてもロマンチックで希望が溢れ出るような感じだよな。

所が実際は大違いで、雪と氷に閉ざされた所、どこだろう。

そうだ。「グリーンランド」だな。

グリーンランドはカナダの北、その名も寒げなアイスランドなんて島が近所にある。

それなのに、何でグリーンランドなのか、先生は子供の頃から不思議に思っていた。

氷河の割れ目が、緑色に輝いて見えたから、そう名付けたのかなとか思っていたが、いやドッコイ、大違い。

何にもならない氷の土地を「グリーンランド」つまり「緑なる大地」なんて名前を付けて、不動産屋が大売り出しをしたんだ。(笑声)

可哀想にこれに大勢の人が引っ掛かっちゃう。

当時、まだ写真は無かったから、悪い奴等の口車に引っ掛かったんだろうが、たとえ写真があったにしても、悪い奴等は平気でウソの写真を使うから、たいして違いは無かったかも知れない。

沢山お金が有って、その一部を出して「一か八かやって見るかい。外れりゃ運が悪いと諦めるし、当たりゃ儲け物だ。」なんて人ならいいけれど「この不景気じゃどうしようもない。新天地でがんばろう」なんて、財産全部処分して参加した人は無惨の極みだ。

お金は全部取り上げられ、帰る船賃も無い。

刻々と厳寒の季節は迫って来るが、暖かい家も食べ物もない。

とにかく、商人たちは自分達の儲け事となりゃ平気で嘘をつく。

この後、凍死してしまったか、それとも餓死したか、本国の親戚や知り合いにSOSして救われたか、不屈のフロンティア精神で凍土に挑戦して開拓したかは知らない。

でも、この事が教えてくれる事は、訳の分からない事には、うかつに手を出すなって言う事だよな。

又、地図のメルカトル図法では、高い緯度の所は面積はとても大きくなっている。だから、これしかのお金でこんなに広い土地が手に入るのかなんて錯覚を起こしたんだろう。

 

 所で、今迄、いろいろとサギやイカサマの話をしたが、君達が将来そういった物に引っ掛からない様にと思ってしてるんだよ。

ある大学の先生からこんな事を聞いた。サラ金がどんなに恐ろしい物か、コンピューターのプログラム作りの応用として学生に計算させたら、こんなに儲かるならここが一番いいってな訳で、サラ金に就職した学生が何人もいたそうだ。(笑声)

よし、先生に教わったサギで、一儲けしてやろうなんてのは駄目だぞ。(笑声) 

 

<脱線千一夜 第59話>


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