純情の愛の星とストーカー
「輝く星座」って歌があるんだ。知ってる者いるだろう。エ？ ♪木枯らし途絶えて、さゆる空より………♪、違う違う、そりゃ「冬の星座」だ。「輝く星座」はナ。
♪男純情の 愛の星の色 それが若さと言うものさ 嬉しいじゃないか ………♪
途中は忘れちゃった。（笑声） でもこの後が大事だ。
♪思いこんだら命がけ、男の心、燃える希望だ 憧れだ、煌めく金の星。♪
となる。この女の子が、気に入ったとなると、肘鉄砲くわされても、「しつっこいわねえ。あんたストーカーじゃないの。警察に訴えるわよ」なんてアカンベーされても、びくともしない。（笑声）
ひたむきに、徹底的に迫っていくのが、男心の輝く星座で、煌めく金の星だと言うんだけど、どうだろうね。
これは男の子だけじゃなくって、女の子にも考えてもらおう。
さあ、好きな女の子が出来たら、命を賭けても、徹底的に迫っていくのは、警察に通報されるストーカーか、それとも、男純情の金の星か。
実はこれについては、ある子が巧い事を言った。
戦争で、勝てば官軍、負ければ賊軍というのと同じで、女の子の気持ち次第。
女の子が、その男の子を好きになれば官軍で「男純情の金の星」、いやがって、絶対に相手にしてくれなけりゃ賊軍で「ストーカー」。男なんて哀れなもんだ。（笑声）
カマキリの雄なんて雌の餌になっちゃうんだし、クジャクの雄なんて、オオカミやハイエナや沢山の敵に狙われてる中で、あんなに派手な格好して一生懸命に雌の気を引く。
これこそ本当に命がけだ。
君達は動物園で見てるだけだから、何とも思わないだろうが、自然の中は敵だらけ。いつどんな肉食獣が襲ってくるかも知れない。その中であのイベントやるんだからなあ。
デモさ、うまく相手がこっちを好きになってくれりゃ良いが、「あんた、ストーカーじゃないの。ハイエナに見つかって食べられちゃいいわ」なんて逃げられちゃったら悲劇だな。（笑声）
所で、勝てば官軍、負ければ賊軍というのは、日米戦で日本が負けた時はひどかった。
勝ったアメリカは正義の軍隊。
広島、長崎、それに東京を始め多くの都市で数十万人の女子供を含む非戦闘員を焼き殺してしまっても、それは、これ以上の犠牲者を出さない為の正しい選択である。
素晴らしきかな原爆。そうして、それを投下したエノラゲイ号に、永遠の栄光あれ。
一方、けしからんのは日本の兵隊共、中国人を始め、多くの連合国人を虐殺した大悪人。
こんな奴等にはまともな裁判なんかしてやる必要はない。
とにかく、日本人であるというのが、戦争犯罪人である証拠だ。（笑声）
調べもしないで、カタッパシから死刑。
以前に、「私は貝になりたい」と言うテレビ映画があったが、あれは上官の命令で仕方なく捕虜を殺した床屋の男が、戦争犯罪人として死刑にされるという筋だが、この場合は、緊急避難という事で法律では無罪でも、勝った方は誰でも構わず仕返しをする訳だ。
やってもいないのに、やったことにされて死刑になった人も大勢いるらしい。
東京裁判で日本の戦争指導者達を大勢死刑にしたけど、あれを、野蛮人の首祭りだと酷評した人がいたとかだが、確かにそのような面もあった。
でも彼らに全然罪はないかというとそれは違う。
当時の日本の指導者達は、ドイツのヒットラーに騙されて、こんな小国なのに、世界中の国を相手にして戦うようになったのは、彼らが全く将来を見据えていなかったからだ。
そうして、天皇の権威を持ち出して、一般国民を戦争に駆り立て、戦闘員のみならず、女子供を含む非戦闘員までも多くの犠牲を出し、日本の産業をメチャメチャにしてしまったと言うことの責任がある。
それだけじゃなく、戦後、５０年以上過ぎていると言うのに、負けちゃったから賊軍で、未だ「世界平和の敵」扱いだ。
北朝鮮も中国も朝鮮戦争でアメリカと対等に戦ったから、大きい顔してる。
ベトナムなんかはアメリカを追い出しちゃったからそれ以上だ。
ドイツは要領がいい。日本と同じ敗戦国だけど、悪いことやったのはヒットラーとその一味で、一般の国民は銃剣に脅かされて、言うことを聞かざるを得なかったと言うことにした。
じゃあ日本はどうだろうか。
天皇の権威によって支えられている日本の支配者層を、アメリカは利用したのだ。
良いたとえじゃないかも知れないが、将棋で敵の飛車を分捕ると、張り駒して、自分の物として使える。
それから間もなく、朝鮮戦争が始まった。そうして、在日米軍の殆どが、朝鮮に送られたが、その結果、日本国内が勢力の空白地帯になった。
これは困ったもので、突然に、日本の反アメリカ勢力が決起してクーデターを起こされたら、たまったもんじゃない。
それでなくてもアメリカは、負けかかってるんだから、日本が、言うこと聞かなくなったらもうお仕舞いだ。南朝鮮は、全部、北朝鮮に取られちゃう。
そこで急いで造られたのが自衛隊だ。
それ迄は、アメリカ軍が日本人を押さえつけていたが、その代わりに、日本人で作った自衛隊にやらせることにした。
このあたり、奴隷をこき使うのに奴隷を使うようなもんで、古代ギリシャ以来、人間の脳味噌はあんまり進歩してないようだな。（笑声）
この時の自衛隊は、警察予備隊と言う名だったけどな。
とにかく、初めから、自衛隊の筒先は、侵略してくる外国の軍隊じゃなくって、日本の国民に向けられていたんだ。
日本のアメリカ軍基地は、日本の防衛の為じゃなくって、アメリカの防衛の為にあるなんてのは当たり前で、それに「思いやり予算」だなんてこの不景気のさなかに、うんとこさ金をくれてやる日本はどうかしてるのさ。
日本が景気良くって、アメリカが不景気だって言うんならまだ話が分かるが、その反対なんだからなあ。
アメリカは海外にあんまり基地があると費用がかかるってので、フィリッピンなんかの基地を縮小したり、止めたりしてんだが、日本からは退く気配がない。
そりゃそうだろう。「思いやり予算」だなんて、うんとこさ、金ふんだくれるんだから、退くわけはない。
負けたら賊軍で、こうして徹底的に絞られる。
戊辰戦争の時、薩摩は錦旗を戴いた官軍、会津は幕府側で賊軍だったが、西南戦争の時は、薩摩は反乱軍にされて賊軍。
しめた、この前に賊軍にされて非道い目にあったから、今度は志願して政府軍になって、あの時の敵討ちをしてやろうと、会津からは多くの者が官軍に入り戦った。
この時は短い間に官軍と賊軍が入り替わったけれど、日米戦の時に負けた日本は、それから半世紀以上賊軍だ。
何だか今日は不景気な話になっちゃったけど、ベトナムと、ついこの間まで戦争をしていたアメリカの大統領が、そのベトナムの首都のハノイを訪問する時代だ。
時の移り変わりは加速度的に速くなっていく。やがて、国家なんて枠が無くなって地球連邦が出来れば、今のような馬鹿な事が無くなるのだろうがな。
その時の地球語はいったい何語だろうかと言うと、日本で明治維新の時に、賊軍、つまり徳川幕府の根拠地の江戸、つまり東京の言葉を標準語にした。
とするならば、ずっと賊軍扱いにされていた日本の言葉が、地球語になるかも知れない。
喜べ、諸君、外国語の勉強は必要が無くなった。（笑声）
と、うまい具合にいけばいいけれど、喜ぶのは早い。万が一、なったにしても、何十年も後のことだ。（笑声）
＜脱線千一夜 第６６話＞
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