ネパールの発電所

 

 この間、テレビでネパールのある村の事やっていた、ヒマラヤ山脈の奥地で、勿論のこと現代文明から取り残された貧しい村だが、そこが、今度、国立公園になった。

じゃあ観光客が、ジャンジャン来てくれていい塩梅かと思ったら、全く反対。

村人達は今迄、生活のために、森林を次々と伐採して燃料にしてた。このままだと、せっかくの観光資源が、メチャクチャになっちゃうので、政府はその村を閉鎖するように決めた。

 

 経済が活性化すれば、エネルギーを今まで以上に消費するのは当然だ。

でもその為に住民を追い出すという手はないだろうなんて訳で、日本からの援助で技術を導入し、ヒマラヤの豊富にある滝のエネルギーを利用して、水力発電所が作られたってわけだ。村の中では数少ない理工科の大学を出ている技術者が何人かで運営する。

でも、村人は、薪を使った囲炉裏(いろり)のようなもんからいきなり電灯だから、まごつく者が多いだろうな。

日本じゃ、薪を燃やす囲炉裏(いろり)から行灯(あんどん)、行灯(あんどん)ってのは石油じゃなくって、植物油や魚油をチョボチョボ燃やしてたんだ。次が石油ランプや蝋燭(ろうそく)、これは電気が来てない山小屋なんかじゃ、今でも使ってるな。それから電灯と言ったわけだが、ネパールじゃ囲炉裏(いろり)からいきなり水力発電だ。だから、いろんな悲喜劇があったらしい。

 

 電池を使うラジオを持っていた者がいる。電池が切れてしまっていて、買えば高い、そうだろう。遠いインドからヤクか何かに乗せて ヤックラサ ヤックラサって運んで来るんだもんな。(笑声)

まあそんなわけで、どうせ電気なんだから、大した違いないだろう。電池がないから電気に繋いじゃえ。(笑声)

ラジオの中には本体の中に電圧アダプターを持ってるのもあるが、普通は電圧アダプターがないと電灯線をラジオに繋ぐことは出来ない。

勿論のこと、ラジオは壊れてしまうし、場合によるとショートして大電流が流れる。発電所ではすぐに送電を止めて、付近一帯、村中が停電になると言うことだ。

そこで、技師が一軒一軒調べて回るって言うんだけれど、ちょっとおかしいと思う。

どこだ。そうだな。ブレーカーだな。

ブレーカー知ってる者は手を挙げてごらん。みんな知ってるな。あれは電気が流れすぎるとバチンと跳ね上がって、これ以上は駄目ですと報せるものだ。

だから何か電気いじりやっていて、しくじってショートさせたら、自分の家のブレーカーが跳ね上がり停電するだけで、よその家も発電所にも迷惑はかけない。

だからブレーカーがありゃあ、そんな故障でアタフタしないのにと思ったら、ブレーカーなんて物はついてませんからなんて、テレビで言ってたが、さてここがおかしい。

何やらこの辺は技師が苦労して民衆の無知と戦ってる事を、あぶり出したかったので、いわゆる、ヤラセじゃないかと思う。どうも眉唾もんだ。

誰か分かるか。理工系に強い奴いるだろう。いや、別に電気に詳しくなくても、常識みたいなもんだ。そうだな、ヒューズだ。

 

 ヒューズ、知ってる者は、手を挙げてご覧。ブレーカーに比べると、ぐっと少ないな。

昔はブレーカーなんて物はなくって、ヒューズだった。ヒューズってのは、鉛の合金だが、沢山の電流が流れると焼き切れる。

針金のようになっていて、10アンペア用、20アンペア用、30アンペア用なんてのがある。小電流用の物は、小さいガラス管の中に入ってるのもある。そうしてそこに書いてある電流以上の電流が流れると、パチッと燃えて切れてしまう。

でも取り替えるのが面倒な上、10アンペア用のヒューズが20アンペア流れても切れない時があると言ったように信頼性が薄いので、ブレーカーに替わった。

所がこの番組を作った奴は若いんだろう。そんな事知らない。昔からずっとブレーカーだったと思っていたんだろうから、先生なんかが見ると、いささか変だなといった物になっちゃう。

 

 まあ、この水力発電で、それ迄のように森林を伐採しないで済むようになった。

10パーセントばかりで済むようになった。となりゃいい塩梅だが、反対に10パーセントばかりは節約出来た。(笑声)

それっぱっちじゃどうしようもないけど、政府じゃ住民の環境を愛する誠意に負けて、村を閉鎖するのは止めたとのことだ。と言うのは口実で、恐らく観光業者達の圧力に負けたんだろうな。地球上どこいっても政治屋は金持ちの業者に弱いんだ。

やがて、秘境好きの物好き達がぞくぞくと押し寄せる。貴重な森林資源は忽ち丸坊主にされる。食い物は持って来るだろうが、それが人間の体内を通り抜けた物は、誰も持って帰らない。(笑声)

今迄の小人数の村人だけなら、自然界の浄化作用で済んでしまうが、大勢の観光客が来たならばそんな訳にゃいかない。

大勢の秘境大好き観光客の中には、日本人も相当いるだろうが、この日本人てえのは公徳心がなくて、周りの迷惑を顧みず、ひどく汚すので有名な動物だ。(笑声)

この大不景気の中で、どこどうやって金集めやってくるんだか知らないが、エベレストなんかのヒマラヤに大勢してやって来る。そうして、死ぬか生きるかの大ピンチの時には仕方ないにしても、そうでないのに、ゴミをメチャメチャに散らかしたまま帰る。

目を国内に向けると富士山がそうだ。富士山は世界に例を見ない美しい山容をしている。コニーデ型火山の典型と言うんだな。この富士山を世界のなんとか遺産に登録しようという時に、あることが問題になった。何かな。そうだ。メチャ汚いってんだ。(笑声)

この組には富士山に登った者いるか? 3人いるか。どうだった。そうか。やはり、メチャ汚いか。(笑声) 臭うって。(笑声) そりゃかなわんな。

と言ったわけで、このネパールでも公徳心のない人間達が、次から次にと押し掛けて、せっかくの自然を台無しにしてしまわないとも限らない。そうなったら、自然が回復するまで、村は閉鎖。日本人の税金で造られた発電所は錆び付いてしまい、税金の無駄遣い。

どうせ造ってやるんなら、水は十分にあるんだ、だからその水を使って、ウオッシュレット付きの大水洗トイレを造った方がいいな。(笑声)

 

<脱線千一夜 第99話>


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