神ではなくて悪魔が人間を作った
今から約七千万年の昔、メキシコのユタカン半島に直径が何十キロメートルもある小惑星が落っこって、津波や舞い上がった灰で暗黒の地球になり、恐竜は絶滅したと言われてることは知ってるな。
これがきっかけで、爬虫類の時代は終わって、人間のような哺乳類の時代になった。つまりその小惑星がぶつからなけりゃ、人間なんて無かったと言えるから、その小惑星は人類の恩人と言える。
でもな、もし、しょっちゅうバンバンバンバンとこの小惑星や、それから、こないだ木星にぶつかったこた知ってんな、シューメーカー・レビー彗星みたいな大彗星が、地球を爆撃したらどうなるだろう。
人間のような文明が出来るどころか、生命だって発生しないだろう。
そこである学者が、こんなでかい小惑星か彗星が地球にぶつかる確率を調べたら、何と数百万年に一回とのことだ。
これは今迄の地球の歴史を調べると、いささか変だ。
この前のメキシコの奴は、今から七千万年前で、それからはそんなでかい奴は落ちてない。じゃ、計算がおかしいのかと言うとそうではない。
つまり、地球にはそんな奴等が落ちないように、護っている者がいるんだ。誰だろう。
え? 空気? そりゃ空気があるから、小さい奴は、摩擦熱で燃え尽きてしまう。だけども、直径が何十キロの奴じゃ、メキシコのように、空気なんか問題じゃない。
分からないか。それはナ。巨大惑星の木星や土星だ。
こいつ等は、地球に比べりゃ密度は小さくてスカスカなんだけど、とにかくでかい。
でかけりゃ重くて引力が強いと言ったわけで、放っときゃ地球にぶつかるかも知れない小惑星や彗星を、自分が吸い取っちゃう。シューメーカー・レビー彗星なんかがいい例だな。
だから巨大惑星がなかったら、地球は計算通りに爆撃されて、せっかく生命が出来ても、それが高等生物に進化する迄に壊されてしまって、せいぜい苔や細菌ぐらいしか、今の地球には育たなかったろうと言う話だよ。
そうすると、人間を造ったのは、神様じゃなくって巨大惑星ってわけだ。
巨大惑星つまり木星と土星は英語で何と言うか知ってるか。
そうだな。木星はジュピター、土星はサタン。ジュピターはとにかくサタンの意味は何だ? その通り、悪魔だ。
つまり悪魔がいたから人間が出来たんで、悪魔こそ人間の命の恩人だ。(笑声)
そうだ。今日は節分だな。
鬼は外、福は内なんて豆を撒くけれど、鬼、つまり悪魔は人間の恩人だ。その恩人に向かって、豆をぶつけるとは恩知らずも甚だしい。(笑声)
大恩ある先生のアダナを陰で言うのと同じだナ。(笑声)
<脱線千一夜 第110話>
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