ピーター・フランクル博士とアメリカの鏡・日本

 

 先生が子供の頃には、ユダヤ人というと、とにかく金に汚い、金の為には病人の布団も剥いで持って行ってしまうと言ったイメージだった。

つまり、シェックスピヤのベニスの商人の中に出てくる、悪人シャイロックの様な感じだったナ。

 

 所が、第二次大戦中に、ナチスによってユダヤ人は迫害され、毒ガスで大勢が殺され、捨てるには勿体ないって言うんで、頭の毛で絨毯を作ったり、体の油分で石鹸を作ったりしたなんて話を読み、天才科学者アインシュタインもユダヤ人だった事などから、逆にユダヤ人びいきになった。

束になってかかって来たアラブの軍隊を追い払って、イスラエルの国を建国した時は、よくやったと拍手を送るような感じだったな。

「アンネの日記」なんかの影響もあったのかも知れん。

 

 所が、所が、(笑声) このイスラエルが、アメリカの援助を受けて、大軍隊を持つ。勿論原爆もナ。

国際的な取り決めに従わないで、占領した所から撤退しない。

まあ、こりゃ国際的な常識かも知れないが、アメリカだって沖縄から出るどころじゃないし、ロシヤだって北方四島返す気はないのと同じか。

まあ、これで腹立ち紛れのイスラム青年が自爆テロをやると、イスラエル軍は報復だと大爆撃して自分がやられた何倍かの仕返しをする。

こんな事を聞いて、ユダヤ大嫌いに成っちゃった。いささか単純に過ぎるかな。(笑声)

 

 所が、所が、所がと、(笑声) ここにハンガリー生まれのユダヤ人、ピーター・フランクル氏と言うのをインターネットで知った。ピーター・フランクル氏を知ってた者いるか。いないか。あんまり知られてないな。

彼は1953年にハンガリーで生まれる。そうして1971年に高校生の時に、国際数学オリンピックで一位になり、金メダルを取る。

その後、勉強して数学博士号を取る一方、ジャグラーという大道芸に熱中して、その免許も取る。

大道芸ってのは、道で大勢の見物人の前で芸をやり、お金を貰うというもんだが、以前にイタリア映画に「道」ってのがあった。そうか。テレビで見た者もいるな。

その中に出て来た大道芸人は、馬鹿力を出して鎖を引きちぎると言うんだけど、普通、手品や曲芸が多いらしい。

「らしい」ってのは、先生は一回も見たこと無いからだ。(笑声)

見ただけで、お金払わないで帰っちゃう奴がいるかって?(笑声)

日本じゃそういった奴が多かったんだろうな。だから、大道芸と言うのは、発展しなかったんだろう。

そこでこのピーター・フランクル氏がやったジャグラーってのは、沢山のボールを手足で操ると言った物らしい。つまりお手玉を高度にした物なのだろう。

然し彼は1979年にフランスに亡命する。そうして、1987年にはフランスの国籍も取得する。

これでいいんかと思ったら、今度はフランスに見切りをつけたのか、翌年、日本にやって来る。詳しくは知らないが、それからずっと日本にいるらしい。

彼は数学の天才であると同時に、語学の天才でもある。とにかく11ヶ国語に通じてると言うから大したもんだ。

なにも大道芸なんかやらなくたって、通訳や翻訳やったって、食ってける。それにいろんなとこから講演を頼まれる。語学の天才だから、通訳なんて要らない。

そこで、彼の話の中から大事なことを紹介したい。

 

 彼が、どんなことでか知らんが、ある政治家の秘書と会って話をしたときのことだそうだ。

その、政治家の秘書の言うことには、日本じゃ世論操作なんか、俺達に取っちゃお茶の子さいさいだと豪語したという。

いいかね。日本人なんてのは、自分で考えてるつもりでいても、みんな、政治屋達のレールに乗せられて、お釈迦様の掌で踊ってる孫悟空と同じだって言うんだ。

何? 孫悟空とお釈迦様? その話も知らないのか。

孫悟空は悪い奴で、天国でメチャメチャな暴れ方をした。この辺は日本神話のスサノヲに似てんな。そこで、お釈迦様に呼びつけられる。

それなのに、俺は世界の果てまでも飛んでいけると自慢し、俺の腕前を見せてやると、筋斗雲という、つまりジェット機みたいに飛ぶ雲に乗って、どこ迄も飛んでいく。

ようやく、息が切れる頃に、空に大きな棒が五本立ってる。ここ迄来られた奴はいないだろうから、俺が来た証拠に、俺の名前を書いておこうと、矢立、つまり昔の万年筆を出して、自分の名を書いて帰って来る。

そうして、今、世界の果てまで行って来たとお釈迦様に自慢したら、あにはからんや、お釈迦様の指に自分の名が書いてある。

つまり、自分じゃ世界の果てまで飛んで行ったつもりが、お釈迦様の掌から出られなかったって訳だ。

 

 こんなわけで、その秘書は、国民なんか自分達の掌から逃げられない孫悟空みたいなもの。自分達は、国民を自由に操られる、お釈迦様だと思ってる。

そこで、彼、ピーター・フランクル氏は言う。英語を勉強しろ。日本の新聞やテレビなんていい加減だ。

今のIT時代にゃ、インターネットで世界中どこの国の論調も分かる。日本語だけじゃ、簡単に政治屋の食いもんになっちゃうとの事だ。

「少年よ!大志を抱け」ってのは、クラーク博士だが「少年よ!政治屋に騙されないように英語を勉強しろ!」ってのが、このピーター・フランクル博士の言葉だ。

ここで、なる程って思ったことがある。それは、今から半世紀も昔の事なんだがな。アメリカにアジア研究家のヘレン・ミアーズ教授という人がいた。この人が「アメリカの鏡・日本」と言う本を書いた。内容は次のようなもんだ。

 

 鎖国していた平和な国の日本を、自分の国の都合で強引に開国させたのはアメリカだ。

日本を開国させてから、インドやインドシナ、インドネシヤ、マレーシヤ、フィリピンのように、植民地にこそしなかったが、欧米の国々は「不平等条約」で日本を苦しめた。

それで日本は、欧米列強に互して植民地戦争をやって次々と勝利していったが、これは日本が、先進国を先生として、ヒトマネ日本と言われる位、極めて優秀な生徒だったからである。(笑声)

今回の戦争を欧米諸国は、日本は侵略国家だとして非難するが、日本は単なる鏡であって、その鏡に写った自分達の姿を見て「悪魔!」「侵略者!」「死刑だっ!」(笑声)っと騒いでいるのである。・・・・・・・

 

 まあこんな話なんだ。ある会社がこの本を日本語に翻訳しようとして、その頃、日本で一番偉い独裁者のマッカーサーに許可を貰いに行ったら、一発でお断りを食ったそうだ。

アメリカ軍が日本を占領してる内は、こんな物の出版は許す訳にはいくもんかなんて言ったそうだナ。

 

 もしも、日本がイギリスのようにアメリカと同じ言葉を使ってれば、民主と自由を標榜するマッカーサーが、翻訳禁止なんて言論の自由に反する事言わなくたって、大勢の読者の反応から、日本の占領は別の形になってたかも知れない。

いや、それよりも日米戦が起こらなかったかも知れないし、人口爆発があっても、何かほかの方法での解決が、探られていたろう。

つまり、何はともあれ、人間がみんな同じ言語で考え、意見が言えることは、そのまま世界平和に行き着くと言うことだ。

いささか堅い話になったけど、マッカーサーが翻訳禁止だなんて言ったが、とても客観的、公正に書かれてるこの「アメリカの鏡・日本」は、読んでみるといいね。

 

 日本は単なる鏡であって、その鏡に写った自分達の姿を見てアメリカ人は「悪魔!」「侵略者!」「死刑だっ!」っと騒いでいるってんだから面白い。

以前に、鏡に映った自分の姿を見て、鏡を殴ったり、蹴飛ばしたり、食いついたりしてたチンパンジーの様子をテレビで見たことがあるけど、アメリカ人なんてのはアレと同じだな。(笑声)

 

<脱線千一夜 第111話>


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