朝鮮人に殴られた鳩山一郎総理大臣

 

 日本がアメリカに負けたときは、B29の絨毯爆撃で日本国中滅茶苦茶になっていた。

何? 絨毯(じゅうたん)爆撃って何かって? 

絨毯爆撃ってのはな。部屋に絨毯を端の方から敷くと、床の部分がだんだんと減っていって、最後に全部が絨毯になる。それと同じで、日本の都市の住宅や工場など、その上に絨毯を敷いていくように、爆弾や焼夷弾で塗り潰していって、最後には綺麗さっぱりの焼野ヶ原にしてしまうことだ。

 

 この様にして住宅や工場はメチャメチャになったが、電車も相当数が被災した。

でも、日本の鉄道は世界一だと昔から威張ってただけのことはある。

夜間爆撃で火事がまだ治まらない内に、あちこちで家が燃えてる中を省線電車、つまり今のJRの電車が、燃えなかった車両をやりくりして走っていく。

でも、とにかく相当数を焼かれて仕舞ったんだから、混雑の酷さと言ったら、みんなの想像を超えたものと言ったらいいだろう。

とにかく、焼かれて減ってしまった上に、戦後はアメリカ軍が徴発する。

例えば、6両編成の電車があったら、そのうちの1両は占領軍人専用車として日本人は乗せない。何十人分の席のある中で、乗ってる奴は2〜3人。それもパンパンガールといちゃつきながら。(笑声)

 

 だから一般の日本人の乗る電車は殺人的な混雑だ。

とにかく、椅子になんか座ってたら、押し潰されちゃう。椅子の上に立っちゃう。

ドアなんか閉まるの待ってたら、発車出来やしない、大勢がドアの所にしがみついて、ドアが開いたままでも走り出してしまう。

先生もこれにゃオッカナイ思いをした。靴のつま先がドアのレール、両手をドアの鴨居にかけて、ドアが閉まらないままで、池袋〜大塚の半駅間を走った。

それから、ドアが閉まったからって、安心は出来ない。とにかくオンボロ車両を長い間ダマシダマシ使ってんだから、何が起きるか判ったもんじゃない。ある時に満員電車のドアが中から押されて外れ、すっ飛んでしまったことがある。

え? そうだ。勿論人間もだ。笑いごっちゃないな。確か川の上かなんかで。4〜5人落ちたらいが、泳いで助かったなんて話は聞かない。

 

 その頃の話なんだけど、軽井沢でヤミ米をうんとこさ担いだ朝鮮人が大勢、駅にやってきた。

ヤミ米は統制品だから、警察に捕まるとすぐに没収だけれど、朝鮮人は「俺達は戦勝国人だ。敗戦国人の日本人共が、何をほざきやがる」と警察の言うことなんか聞けばこそだ。負けた日本軍から取り上げたピストルなんか持ってる。

警察は日本人は取り締まっても、朝鮮人はどうしょうも出来ない。ヤミ米だろうと何だろうと堂々と法律違反だ。

そうしてこの朝鮮人達は軽井沢で一台の車両を「朝鮮人専用車」と書いて、そこに乗ってる日本人達をみんな引きずり降ろした。

そればかりじゃない。丁度そこに乗り合わせた、品のいい日本人の初老の男が「無茶な事なさんな」と止めたら、棒でメチャメチャにぶん殴って、半殺しの眼に遭わせてしまった。

所で、この朝鮮人に殴られて半殺しにされた男は誰だと思う? その後、何年かたって、日本の内閣総理大臣になる鳩山一郎だ。え? そうだな。今、兄弟で政治家になってる、鳩山議員のお祖父さんだ。  

 

 こんな事は何も軽井沢だけに限らず、日本国中何処でもこんなザマだったんだ。

とうとう、アメリカの日本占領に差し障りがあると言うわけで、マッカーサーが「朝鮮人は戦勝国人ではなくて第三国人だ。」と発表し、不逞朝鮮人を鎮圧する目的で、米第八軍司令官アイケルバーガー中将が命令して機関砲を備えた装甲自動車を出し、朝鮮人でも日本の法律に従わなければ駄目だと脅かして、いくらか騒ぎが収まった。

まあ、朝鮮人の中にも、日本が戦争に負けたから、これを良いチャンスにして、うんとこさ儲けてやろうなんてつまりヤクザのような奴が居たのだろうが。

一つの箱の中に一個だけ腐ったリンゴがあったからって、その箱のリンゴが全部腐ってるわけじゃない。

先生の知ってる朝鮮人の人達にしてもみんな良識のある人ばっかりだから、朝鮮人のヤクザが居たからと言って、朝鮮人がみんなヤクザじゃない。

日中戦争の時も、一部の日本兵が、悪い事をしたからって、日本兵が全員悪人だと決めつけてもいけない。

 

 こないだ、例の作家のY氏の思い出を読んだが、交差点でY氏が自転車に乗って止まっていた。そこにアメリカ兵が大勢乗ってるトラックが来て隣に止まった。

そうしたら、その中の一人の兵隊が眼でこっち来いと合図する。何だろう。チョコレートか何か呉れるのかな。(笑声) どうせ呉れるのなら飲みかけでもいいからウイスキーでも呉れねえかな。(笑声)

まさか、それ程でも無いだろうが、何を呼んでるんだろうと近づいた途端、後からヘルメット出して、頭を力いっぱいぶん殴られた。

たまったもんじゃない。Y氏は自転車ごとひっくり返っちゃた。直ぐ信号が変わって、大笑いをしてるアメリカ兵を乗せたトラックはそのまま走り出して行く。

色々な国から新聞記者が沢山来てる東京じゃ、みっともないことをやらかすと、世界中に話が広まっちゃうと言うから、割とマトモな兵隊にしたと言われる。Y氏は東京の下町育ちでそこの話なんだろうが、中にはそんなおかしなのも混じってたんだ。

 

 丁度その頃だろう。先生が道を歩いてたら、隣にジープが来てすっと止まった。

何だろうと思ったら、助手席を指してここに乗れって言う。どうしたと思う? 断ると、抵抗するとは何だとピストルで撃たれちゃうだろうから、乗せて貰ったよ。幸いにヘルメットで殴られなかった。(笑声)

家の近くまで乗せて貰ったけど、鼻歌なんか歌っていて、面白い兵隊だった。あの感じからすりゃ芸能人なのかも知れない。(笑声)

エルヴィスプレスリーに似てたけど、ひょっとしたら、本物のエルヴィスプレスリーかも知れないな。(笑声)

 

 

<脱線千一夜 第169話>


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